2020 年 19 巻 p. 35-63
学校や語学教室などの教育機関に通うことなく、また、通信教育などの特定のカリキュラムに依ることもなく、独力で日本語を学ぶ「独習者」に出会うことが多くなった。しかし、「独習」はその性質上、個別学習であるため実態をつかむのが難しく、「独習者」を対象とする研究はまだ少ない。本研究では、「独習」により高い日本語力をつけた S さんに個別インタビューをおこない質的研究法 TAE を用いて分析した。S さんは、新しい言語を学ぶときには、まず、教科書を活用して集中的に文法を学習し、その後は、動画や記事など生素材を視聴、読解し、アプリを活用しゲーム感覚で、単語を中心に学習し続けていた。また、S さんは、試験合格や就職などの具体的目標をもって学習しているわけではなく、「人と話すこと」を目的とし、言語学習そのものを楽しんでいた。