2020 年 57 巻 4.5 号 p. 219-232
本研究では、キャンセレーションタスクにおける知的障害者の視覚探索の特徴および定型発達児の発達変化について検討した。198名の3歳から12歳の定型発達児と20名の成人、 26名のダウン症を除いた知的障害者に対し、ターゲットの種類数が1種から3種である3種類のキャンセレーションタスクおよび言語性認知検査と視空間性認知検査を実施した。結果、定型発達児と成人においては、3つの発達段階があることが示された。またターゲットの種類数では、1種と2種もしくは3種の差はすべての年齢においてみられたが、2種と3種の差は9歳以降でのみみられた。知的障害者は、ターゲットが1種と2種の場合は定型発達児と同様の傾向を示したのに対し、3種については、精神年齢(MA)による変化がみられなかった。認知機能との関連においては、定型発達児と知的障害者の両群ともに視空間性認知機能と相関がみられたが、記憶負荷量により、依存度の違いが示唆された。