2017 年 65 巻 11 号 p. 564-567
高校生の興味喚起を目論んだ語りかけを想定し,芳香族化合物の反応を電子構造と絡めて整理することで,「有機電子論」と「硬い酸塩基・軟らかい酸塩基の考え方」の背景となる分子軌道法の考え方を炙り出し,中等教育の導入への雰囲気醸成を試みる。化学の,多様で曖昧な物質の構造や挙動の理解解釈の慧眼を養う学術という特徴に対して,「分かりやすい絵」や「一つの答え」の多用には思考停止を促す側面も明らかにある。私達が不得手としてしまった,文章頼りに思索を巡らす思考の原点に立ち戻り,個人個人の化学観の熟成へと挑みたい。