抄録
本稿は、2023年9月に慶應義塾ミュージアム・コモンズで行われたトーク・イベント、「エフェメラの住み処:ライブラリー、ミュージアム、アーカイヴ」の内容をもとに、プリンテッド・マターのひとつと言えるアーティスト・ブック(以下、AB)という言葉とその対象について考察するものである。現在ABは、アーティストの本として広く一般的に用いられる言葉である一方、主に1960、70年代に盛んに制作された、アーティスト自身が芸術作品のひとつとして表現した本とそのジャンルを示す用語でもある。この言葉がいつ、どのような背景で誕生し広がって行ったか、そしてその意味や対象がどのように変化して行ったのかを、これまでの言説や作品、展覧会例等を参照しつつ整理する。また、ABはその特性上、図書館、美術館、アーカイヴといった複数機関で扱われるが、本稿では美術館の視点から見た現実と可能性にも触れる。