抄録
【目的】我々は先行研究において、聴覚刺激を用いた周期的な連続刺激における刺激回数の増加が、筋電図反応時間やタイミング一致課題の同期誤差に及ぼす影響について検討した結果、1~4回目までの刺激で筋電図反応時間と同期誤差は短縮し、5回目以降には有意な差を認めないことを確認した。これは、最初の4回の周期的な運動を行うことにより、情報処理と運動が自動化されていることを示唆している。そこで本研究では、周期的な連続刺激を5回呈示し、その後も継続して刺激を呈示する場合と、刺激を呈示しない場合における運動の時間的誤差を比較し、周期的な連続刺激と運動の自動化の関連性について検討を行った。
【対象と方法】対象は、聴覚刺激を聞くにあたり障害のない右利きの健常者12名(男性10名、女性2名、平均年齢25.3±4.2歳)とした。対象者を周期的な聴覚刺激に運動を同期させる群(synchronization movement:以下SM)と5回の周期的な聴覚刺激に運動を同期させ、その後刺激がない状態で運動を継続する群(continuation movement:以下CM)に分けた。聴覚刺激の入力にはViking Quest(Nicolet)、運動開始の記録にはテレメトリー筋電計MQ8(キッセイコムテック株式会社)を用いた。被験者は椅子座位とし、右示指をスイッチセンサーに位置させた。聴覚刺激の刺激条件は、刺激頻度1Hz、刺激強度70dBとし、刺激の入力にはヘッドホンを用いた。13回のスイッチ押し運動を1試行とし、各被検者に15試行実施した。スイッチセンサーより得られた運動開始時刻を確認し、運動と運動の時間間隔を算出した。最初の5試行を除く合計10試行の平均値を個人の代表値とした。検討項目は、各群における5回目の聴覚刺激以降の運動の時間間隔の変化と両群間における運動の時間間隔の差の2つとした。統計処理には一元配置分散分析と対応のないt検定を用いた。被験者には研究の目的と方法を説明し、同意を得て実施した。
【結果】各々の群において、運動の時間間隔の変化に有意な差は認めなかった。また、両群間の時間間隔の差に有意な差は認めなかった。しかし、CM群はSM群と比較し、刺激回数の増加に伴って時間間隔が短縮し、運動のペースが速くなる傾向が認められた。
【考察】先行研究より考えると、両群ともに5回目までの刺激において時間間隔を認識し、以降は時間的予測に基づいた運動を自動的に行っていると考えられる。しかし、CM群は外的な刺激がなくなると運動の時間間隔が短縮することから、自動化された運動においても、外的な刺激により運動が修正されていることが示唆される。周期的な連続刺激と運動の自動化の関連性については、刺激の回数や頻度を変化させ、さらに検討する必要があろう。