抄録
【目的】新規のパフォーマンスを獲得する際に「1・2・3」、「1・2・3」といった周期的なリズムを刻む練習戦略をとることがある。このような周期的なリズムが外部もしくは内部的な生成要因によって運動学習にどのような影響を与えるのか検討した。
【方法】本研究に同意を得た健常者17名(年齢20.6±2.3歳)を対象とした。課題は足関節の底背屈運動を可能にするシーソー板の先端にマーカーを付け、マーカーと規定した高さ(75mm)を一致させるターゲット‐マッチング課題である。課題練習する際に、次の3つの練習条件を設定した。1:音刺激が無い練習条件(音なし)2:周期的な音刺激に合わせながら練習する条件(音あり)3:周期的な音刺激を認知した後にその音刺激を自己再現しながら練習する条件(音再現)とした。音刺激はViking Quest(Nicolet社)を用いて頻度0.5Hz、強度85dB、周波数1.0kHzとした。実験手法はトランスファー・デザイン(プレテスト・練習課題・ポストテスト)とし足関節の背屈‐底屈を1試行とした。プレ・ポストテストは5試行1セット、課題練習は9試行5セットで行った。記録はマーカー軌跡を3次元動作解析装置UMCAT(ユニメック社)で記録した。足関節底背屈主動作筋である前脛骨筋とヒラメ筋をテレメトリー筋電計MQ8で記録し、動画・筋電図解析プログラムBIMUTAS‐Video(キッセイコムテック社)を用いて解析した。各試行のマーカー上限値と規定した高さの誤差(絶対誤差)をプレ‐ポストテストの学習効果判定指標とした。課題練習中はマーカー軌跡と筋活動パターンより検討した。統計学的分析は群内比較を対応のあるt検定、群間比較を一元配置分析法と多重比較検定法(Tukey‐Kramer法)を用いた。
【結果】プレテスト群間比較は有意差を認めず、各条件の学習効果判定の比較は意味のあるものと言える。音なし条件と音再現条件は学習効果を認める(p<0.01)が、音あり条件は学習効果を認めなかった。前脛骨筋の活動パターンは音なし条件では試行開始から終了まで筋活動が見られた。音あり条件は音刺激に反応し、試行開始直後に振幅の大きな筋活動を認めた。音再現条件は試行開始から筋活動は見られるが、規定値上限付近の折り返しから終息する筋活動を認めた。
【考察】運動学習する一次課題に対し、音刺激条件は二次課題となる。音あり条件は外部からの音刺激が足関節運動の反応開始刺激となり、次の音刺激と合わせるためには外部からの聴覚情報に注意を分配しておく必要がある。つまり二次課題は一次課題の注意を干渉している。一方、音再現条件は学習者内部からの音再現によって、運動ペースを制御し、底背屈反復練習の自動化を生じさせるのではないかと考えられる。各試行ペースの自動化は主課題への注意の分配を増大させるため、運動学習効果を認めたと考えられる。