近畿理学療法学術大会
第51回近畿理学療法学術大会
セッションID: 102
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糖尿病患者への個別運動療法への取り組み
健康行動理論を通しての関わり
*東村 奈緒美森 智子諸頭 幸平薬師川 晴奈野村 哲
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キーワード: 糖尿病, 運動継続, 行動変容
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抄録
【目的】当院の糖尿病教育入院患者の運動療法では、指導要項を用いた、疾患に対する知識伝達、運動の目的・禁忌、具体的な運動方法とライフスタイルの改善を指導してきた。入院という療養に専念できる環境では、それを理解し、積極的に取り組むことができても、退院後、実生活に戻ると継続困難な場合や、入院中でも運動に対しての関心が低い場合など、個人の心理的状況、ライフスタイルや、個別性に応じた指導が必要ではないかと考えた。そこで、松本らが提唱する、健康行動理論(以下、理論)を用いた評価や関わりを導入し、その効果を検討した。 【方法】対象は、糖尿病教育目的で入院し、合併症はあっても運動・歩行可能な患者とした。従来の運動療法を実施した群を理論導入前群、従来の指導方法に理論を加えて運動療法を実施した群を理論導入後群とした。行動変容ステージは無関心期、関心期、準備期、行動期、維持期の5段階で、両群の行動変容ステージを入退院時にアンケート調査を行った。アンケートの内容は、入院時には現在の運動状況や運動への関心、退院時には、退院後の運動計画や目標を聞き取り、そこからステージを決定した。導入後群では、理論の評価項目である1.運動療法への有益性、2.自己効力感3.妨げ、4.健康面への脅威、5.ストレス、6.家人や友人など周囲のサポート、7.内的コントロール所在(自分の努力で決まるかどうか)の7項目を評価し、欠けている部分へのアドバイスや言葉がけとステージに合わせた介入を行った。介入法は、無関心期、関心期の患者には、まずは、考えや感情の傾聴、運動を開始するか否かで、どのように病状や体調が変化するかなど、考えに対する言葉がけを行い、準備期、行動期に進むと、賞賛することで、行動を強化し、具体的な目標設定などを提案した。既に運動をしている行動期、維持期を除いた、導入前群19名(平均年齢60.7±13.9歳、男7名・女12名、入院期間の平均22.6±10.9日)、導入後群14名(平均年齢68.6±15.0歳、男6名・女8名、入院期間の平均17.9±11.1日)を行動変容ステージが進んだものを「行動変容あり」、ステージが変わらなかったものを「行動変容なし」とし、Fisherの正確確率検定を用いて算出した。なお、導入前群のうち7名はアンケートを実施しておらず、カルテ内容からステージを推測した。 【説明と同意】個人情報管理に配慮し、アンケートを行い、研究に使用することを説明し、同意を得た。 【結果】理論導入前群は、「行動変容あり」13名、「行動変容なし」は6名、理論導入後群は14名全員が「行動変容あり」となり、理論の導入で、運動療法に関して行動変容ステージは有意に進んだことを認めた。(P<0.05) 【考察】先に述べた7つの項目による評価は、欠けている部分への重点的なアドバイスや言葉がけを可能とした。運動継続困難な例として、忙しくて運動の時間が取れない場合には、細切れでも効果があることを説明し、短時間でできる簡単な運動指導を行った。飽き性や気候により中断してしまう場合には、室内でできる運動方法の紹介やレジスタンストレーニングを中心にしたパンフレットを作成し、それを用いて指導した。また、行動変容ステージを評価することは、その時期に応じた効果的な介入を可能にした。準備期、行動期に進んでいる場合には、1日、1週間のスケジュールを書き出してもらい、その患者の性格や生活状況に応じた実現可能な運動の計画や目標を話し合うことができるようになった。その際、具体的な運動量がわかりやすいように、生活活動での消費カロリーを算出したうえでの運動時間、方法を提案することもあった。このように、筋道を通した関わりをし、PTが共通の用語や評価ツールをもち、担当者以外も一貫した関わりがもてるようになり、これらが結果に繋がったと考えられる。 【理学療法研究としての意義】糖尿病の運動療法において、運動指導とともに、心理状況に対しての評価・介入は運動継続に関して、より効果が得られることが示唆された。
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© 2011 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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