抄録
【目的】
理学療法の臨床場面において、筋力の評価としてMMTが一般的に用いられている。しかし、MMTは検者の主観的要素が関与するため<1)/SUP>、fairからnormalでは信頼性に乏しい<2)/SUP>等により、客観的な評価を行いにくいなどの問題点も存在している。また、疼痛や合併症を併発している整形疾患患者では、筋力測定において、潜在能力を十分発揮できているとはいいにくい。
これまでに、断面積などから筋力予測できるとの報告<3)/SUP>がある一方で、筋断面積の測定では、筋の形状を考慮できないことが指摘されており<4)/SUP>、筋容積との相関について述べられている報告は少ない。
そこで、筋容積を筋の機能的な評価に用いることが出来ないか検討するため、筋力と筋容積の関係について調査を行ったので報告する。
【方法】
健常者20名(男性10名、女性10名、平均年齢25.1±3.5歳)の大腿四頭筋容積をMRI(GE社製、HDxt、1.5T)を用いて、仰臥位、膝関節伸展位にて上前腸骨棘から脛骨粗面までを、大腿骨の長軸方向に対し、スライス幅4mm(2mm ov)で、CUBE、TR600msec、TE13.8msecに設定し、当院の放射線技師により撮像を行った。その後、大腿骨の長軸に対し水平に10mm間隔でスライスし、面積を測定し体積を算出した。筋力の測定には、ハンドヘルドダイナモメーター(アニマ社製、μ-Tas F-1)を用いた。アニマ社の測定方法に準じ、端坐位にて等尺性膝伸展筋力を測定した。統計学的検定には、スピアマン順位相関係数検定を用いた。
【説明と同意】
本研究は、当院の倫理委員会で承認を得た後、対象者には本研究の目的と方法の説明を行い、参加の同意を得て実施した。
【結果】
相関係数は0.82(p<0.01)であり、大腿四頭筋の筋容積と筋力の間に、有意かつ高い相関関係を認めた。
【考察】
中野<5)/SUP>は、最大筋力は筋の太さ、すなわち横断面積に比例していると述べている。しかし、断面積の測定では筋の形状を考慮できないとの報告もあることから、本研究では、筋の形状を考慮できる筋容積を算出することで、より詳細なデータが得られたのではないかと考えた。そこで、容易に筋力を測定できる等尺性筋力を用い、筋容積との間に高い相関関係がみられた。これにより、MRIの画像所見から筋容積を算出することによって、潜在的な筋力を客観的に測定することが可能となり、何らかの影響によって筋力を発揮できない対象者に対し、おおよその筋力を把握できることが示唆された。今後、健常高齢者を対象として、筋容積と筋力に相関関係があるかを明らかにしたい。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は、より詳細な方法で筋容積と筋力の間に、高い相関関係があることを明らかにできた。EBMの重要性が指摘されている現在、より客観的な指標が必要になると思われる。今回の試みにより、これまで主観的に評価されていた筋力について、客観的な情報を提供できると考える。
【参考文献】
1)平木幸治,横山仁志,他:膝伸展筋における徒手筋力検査法の問題点-徒手筋力検査と等尺性膝伸展筋力の関係-,理学療法学,2003,30,317
2)板場英行:筋力測定-筋力評価の問題と今後の課題-,理学療法学,1990,17,236-237
3)市橋則明,吉田正樹:膝屈伸筋の断面積と筋力の相関関係について-若年群と高年群の比較-,体力科学,1996,45 ,837
4)石崎忠利,波木卓夫,他:大腿筋筋腹の位置に関する解剖学的、計測学的研究,体力科学,1984,33,27
5)中野昭一:運動の仕組みと応用,医歯薬出版,2005,pp7-8