近畿理学療法学術大会
第51回近畿理学療法学術大会
セッションID: 73
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膝伸展ramp収縮課題時における内側広筋の筋活動
*北山 涼太岩淵 順也國枝 秀樹吉田 拓真中裏 智哉谷埜 予士次鈴木 俊明
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抄録
【目的】 膝蓋大腿関節障害や非接触損傷による膝前十字靱帯損傷は女性に多く発症する傾向があり、その要因として、下肢アラインメントの性差や、内側広筋斜頭(vastus medialis obliquus: VMO)の発達の性差などが挙げられている。谷埜ら(2009)はVMOと内側広筋長頭(vastus medialis longus: VML)の機能を明確にする目的で筋疲労条件下での筋電図学的検討を行い、内側広筋の機能の性差はVMOの発達の程度以外に、VMLの活動するタイミングが異なる可能性を示唆した。また、男子の結果において、VMLは筋疲労が進行した時期に活動することも報告した。このVMLの活動するタイミングが異なる可能性は筋疲労特有の結果なのか、筋電図測定時のターゲットトルクが相対的に増大したことによる膝伸展運動の努力度に起因するものかについては明確にできていない。 そこで、本研究では筋力強化練習に応用するための基礎的研究として、膝伸展の等尺性収縮を漸増収縮(ramp)課題で行い、内側広筋の動員時期について筋電図学的に検討することを目的とした。 【方法】 膝関節に異常を認めない健常男子10名(平均年齢21.9±1.3歳、平均身長170.8±2.8 cm)と健常女子10名(平均年齢22.3±1.4歳、平均身長157.9±7.3 cm)の右下肢20肢を本研究の対象とした。 対象者をBiodex System3 (Biodex Medical Systems inc.)のシート上に右膝関節60度屈曲位での椅子座位とさせ、5秒間で膝伸展の最大トルクを発揮するramp収縮課題を計5回行わせた。 筋電図はテレメトリー型筋電計MQ8(キッセイコムテック社製)を用い、VMO、VML、外側広筋(vastus lateralis: VL)、 大腿直筋(rectus femoris: RF)の4筋より双極導出にて記録した。5回施行した膝伸展ramp収縮課題より、膝伸展トルクの増大が最も直線的であった試行を対象として、膝伸展の最大トルク値を元に20、40、60、80%のトルク発揮の時点を決定した。そして、各々の%トルク発揮時点の前後250msの筋電図を2kHz のサンプリング周波数でAD変換した後、筋電図解析ソフトBIMUTAS-Video(キッセイコムテック社製)を用いて筋電図積分値(integrated electromyography: IEMG) を求めた。本研究では、膝伸展トルク値とIEMGの相関関係を各筋において検討した。なお、相関はピアソンの相関関係を用いて検討し、危険率5%未満のものを有意とした。 【説明と同意】 対象者には本研究の主旨および手順を説明し、同意を得た上で実験を行った。 【結果】 膝伸展トルクとIEMGは男女ともにいずれの筋においても有意な正の相関を示した。相関係数について、VMLが最も高く(r=0.89)、次いでVMO(r=0.78)、VL(r=0.75)、RF(r=0.56) の順であった。なお、この順は男女ともに同様であった。 【考察】 Alkner et al.(2000)は膝伸展トルクと最も高い相関関係にあるのはVLの筋活動であると報告しているが、本研究のように内側広筋をVMOとVMLにわけて検討すると同様の結果であったかもしれない。VMLは大腿長軸から15度内側に傾斜して走行し、VLは大腿長軸から約20度外側に傾斜した走行であると報告されている。このことより、VLよりもVMLの方が効率よく膝を伸展させることができると考えられる。また、筋線維組成の観点から考察するとVMLはVLおよびVMOと比較してType_I_線維の比率が多いと報告されている。サイズの原理より、Type_I_線維の比率が多いVMLの筋活動がramp収縮の初期から動員されたため、膝伸展トルクとIEMGの間に高い相関がみられたと考える。 疲労課題を用いた先行研究では、VMLは筋疲労が進行した時期に膝伸展トルクを維持するために活動した結果を報告しているが、これはType I線維は疲労耐性があるという根拠に基づいている。先行研究より、VMLは筋疲労条件下においては膝伸展および膝蓋骨の安定化に関与し、本研究の結果からは漸増的に膝伸展トルクを発揮する課題でも初期から動員される筋であることが明らかとなった。 【理学療法研究としての意義】 膝蓋大腿関節障害や非接触損傷による前十字靱帯損傷はVMOとVLの筋活動の不均衡が一要因として考えられているが、VMLの筋活動も評価に加えることによって障害発生との関係を見出すことができる可能性がある上、VMLの機能不全を改善させる筋力強化運動は上記障害の発生予防に貢献できると考える。
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© 2011 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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