抄録
ベンジル位カチオンの安定性に及ぼす置換基効果解析では置換基の電子効果を誘起効果と共鳴効果に分離して評価する湯川―都野式が精度よく適用される。その一方で、アニオン系では溶媒の効果が顕著に含まれるため解析は容易でない。我々はフェノールの酸性度に及ぼす置換基効果に共役塩基の環置換基への特異的水和が重要な役割を果たすことを明らかにした。今回は溶媒を含まない気相中での本質的な置換基の効果を明らかにするため、電子的に多様な環置換基を導入したベンジル位アニオンの気相安定性を分子軌道法を用いて決定した。種々のアニオン系の置換基効果を互いに比較して、陰イオンの安定性にどのような電子効果が重要かを検討した。