抄録
フェニルシクロブテニリデンを対応する前駆体の光分解によって発生させ,その直接観測に成功した。このカルベンの寿命は2ないし4マイクロ秒であり,容易にブタジエニリデンを経由してビニルアセチレンに転位する。酸素に対する反応性の欠如ならびにアルケンとの反応の結果からこのカルベンは基底状態一重項であることが示された。ベンゼン中,アルコールとの反応ではO-H挿入生成物が得られたが,その反応速度はアルコール濃度のべき乗に比例することが明らかとなった。これはおそらくアルコールモノマーよりもオリゴマーのほうがカルベンに対する反応性が高いためと思われる。