2024 年 72 巻 9 号 p. 336-343
「宇宙倫理学(space ethics)」とは,宇宙開発がいっそう人類のためになるよう,宇宙開発に伴い生じる可能性のある倫理的・社会的な影響を事前に予測し,それへの対処を行う「宇宙開発の倫理(ethics of space exploration)」と,宇宙進出に伴い生じる可能性のある人間観・価値観・世界観の変化を検討することで「人間とは何か」を考察する「宇宙開発を通じた倫理(ethics through space exploration)」の二つからなる,応用倫理学のなかでも比較的新興の領域の一つである.しかし,宇宙倫理学研究としてみると,海外の研究活動の動向と日本での進展の間には強調点の違いがある.本稿では,海外の動向として米国と欧州からそれぞれ一つ事例を取り上げ,それを検討することを通じて,日本の宇宙開発がより「倫理的に望ましい」ものとなるためには倫理的な議論をする場が必要だと指摘する.