2023 年 73 巻 2 号 p. 143-148
目 的:2010年以降の梅毒感染の拡大について分析し今後の動向について検討する.
方 法:梅毒感染の発生数の動向を他の性感染症の発生数の動向と比較する.COVID-19発生前後の3年間について群馬県の月毎の梅毒発生届出数を用いて実効再生産数を求め,これをもとに今後3年間の感染発生届出数の推測値を試算する.
結 果:梅毒発生数は他の性感染症よりも増加傾向が大きかった.実効再生産数の変動は冬に低く夏に高い傾向が繰り返されていた.今後の発生届出数は2022年の実効再生産数の動向が継続した場合年々増加し1年後に1.4倍,2年後に1.6倍,3年後は1.9倍,2021年の動向が継続した場合はそれぞれ2.4倍,6.7倍,16.4倍であった.
考 察:本邦の梅毒発生には約20年毎の山があり2027~2028年頃が次の山頂とすると今回の結果は現在がまだまだ裾野であることを支持するものであり,梅毒のアウトブレイクは始まったばかりであることが示唆された.