抄録
【はじめに】エンスタタイト(MgSiO3)は5種類の相(斜方エンスタタイト・プロトエンスタタイト・低温型単斜エンスタタイト・高温型単斜エンスタタイト・高圧型単斜エンスタタイト)が報告されており、従来、斜方エンスタタイト(Pbca)の高温相としては高温型単斜エンスタタイト(C2/c)とプロトエンスタタイト(Pbcn)の2相が存在するが知られている。最近、我々のグループは分子動力学シミュレーション実験により、斜方エンスタタイトの高温相として新たに高温型の斜方エンスタタイトの可能性について発表した。本発表ではこの高温型斜方エンスタタイト相の出現温度・圧力領域について、斜方エンスタタイトを出発物質として圧力条件を変えた分子動力学シミュレーションを行い議論を行う。【高温型斜方エンスタタイト】高温型斜方エンスタタイトの空間群は低温相とおなじPbcaを持つが、ほぼ伸張しきった2種類のSiO4-chianをもち、さらにM2サイト中のMgイオンと配位するO3イオンが低温相とは異なるO3イオンにつけ変わった構造を持つことが分かった。そのため、低温相とは明らかに異なり、また高温型の単斜エンスタタイトおよびプロトエンスタタイトとも異なる相である。また、その0GPaでの相転移次数は1次である。【分子動力学シミュレーション】分子動力学シミュレーションは分子動力学計算プログラム, MXDTRICL (Kawamura 1996, JCPE #077), を用いて行った。初期構造として斜方エンスタタイト(Morimoto & Koto, 1969)を、原子間相互作用モデルとしてクーロン・近接反発・ファン・デル・ワールスおよびモース項からなる2体中心力形式を用い、パラメーターはMiyake (1998)による値を用いた。クーロン項の計算にはエワルド法を用い、6400粒子系(2a x 5b x 8c)で三次元周期境界条件を課し、2fs/stepにて運動方程式を解いた。温度条件は300 - 2000K、圧力条件は0 - 8 GPaで行った。温度制御・圧力制御として強制スケーリング法を用いた。【結果】低温型_-_高温型斜方エンスタタイトの相転移は1GPaまでは比較的シャープな飛びが見られ1次の相転移の振る舞いを示すが、2GPaではほとんど飛びが見られず、それ以上の圧力では相転移を確認することが困難になった。低温型_-_高温型斜方エンスタタイトの相転移線は、以前行った単斜エンスタタイトの低温相_-_高温相との相転移線と比較すると、若干高い温度でほぼ並行を示した。