高分子論文集
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グリコリドの連続的溶融-固相開環重合法によるポリグリコール酸の合成と性質
佐藤 浩幸小林 史典市川 幸男大石 好行
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2012 年 69 巻 2 号 p. 60-70

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抄録

工業的な高分子量ポリグリコール酸(PGA)の製造方法として,グリコリド(GL)の開環重合による連続的溶融-固相重合法を考案し,種々の重合条件における速度論的解析と重合物のキャラクタリゼーションを行った.本報において,触媒として SnCl2・2H2O,開始剤として 1-ドデカノールを用いて 170℃ で重合を行ったところ,Mw が 280,000,Mw/Mn が 2.0 の PGA を得た.これは既存の文献や縫合糸として市販されている PGA と同等以上の高分子量体であった.140~170℃ の範囲における重合速度の活性化エネルギーが 110±3 kJ/mol で,触媒濃度と重合速度は一次の関係にあった.開始剤が反応速度に及ぼす度合いは,H2O と一級アルコール類に差が認められたが,アルコール化合物間の速度差は小さかった.また,開始剤として使用した H2O と GL との反応により生成するカルボン酸が重合速度を低下させた.重合触媒は PGA の構造に影響しないが,熱安定性に影響した.開始剤は PGA の末端構造と分子量に影響し,開始剤に H2O を用いると PGA の末端構造はカルボン酸基,一級アルコールを用いるとそれに相当するエステル基が導入された.また,PGA の分子量は基本的には開始剤濃度で制御されるが,重合温度は相変化に影響し重要な因子であることがわかった.

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© 2012 公益社団法人 高分子学会
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