本研究では話題選択の様相、話題間のつながり及び話題導入のプロセスという3つの観点から事例分析に基づき日中知り合い同士の会話における「恋愛」の話題導入の異同を分析した。その結果、まず共通点については(1)会話実験の後半で「恋愛」が取り上げられやすい、(2)直前の話題に関連なく「恋愛」が導入された場合配慮表現の使用が必要とされるという2点がある。次に本研究で見た相違点は以下のような3点である。(1)日本語母語場面と比べ、中国語母語場面の事例では約半数の組が「恋愛」を選択した。(2)中国語母語場面の事例では直前の話題に言及された語句を取り上げ「恋愛」を導入したことが観察された。(3)日本語母語場面の事例では「恋愛」が導入されると当該話題をめぐる会話参加者の交渉が行われ、導入のプロセスがわりと長い。これに対して中国語母語場面では「恋愛」が導入されると即座に話題化される。