2022 年 43 巻 p. 75-92
本稿では主に中国語母語話者日本語学習者の「で」と「を」の誤用を手掛かりに、場所名詞をマークする「で」と「を」の選択条件と学習者の誤用要因を検討してみた。結果は以下のようになる。①移動動作が場所名詞の示す空間の中で行われる場合のみ、場所名詞は「を」と「で」の両方でマークできる。②主体の動作を前景化し、場所名詞が示す空間は動作が行われる場所であることを強調する場合、「で」をとる。主体の移動を前景化し、場所名詞が示す空間内での移動を強調する場合、「を」をとる。③学習者の誤用要因は主に母語の干渉により、場所名詞を「で」でマークするという過剰般化であると考えられる。