2017 年 63 巻 p. 14-22
ウンシュウミカンにおいて,有機農産物の日本農林規格(以下,有機JAS 規格)に適合した病害虫防除技術を確立するために,無農薬での病害虫の発生状況を3年間調査した。その結果,そうか病とミカンサビダニが最も問題となることが明らかになった。そこで,有機JAS 規格において使用が可能なボルドー液を使用したところ,そうか病の発病は抑制され,さらに,水和硫黄剤を散布することで,ミカンサビダニの発生が著しく抑制された。また,化学的防除技術と耕種的対策との組み合わせにより,有機JAS 規格基準を満たす果実生産が可能な防除体系を実証した。さらに,物理的防除技術として中晩柑類の品質向上対策として利用されている開閉式雨よけ施設を導入することで,そうか病のみならず,黒点病および灰色かび病の発病についても著しく抑制され,有機栽培ながら慣行の化学防除剤を用いた露地栽培よりも外観が良く,高糖度の果実が生産できることが明らかになった。