主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2021 from SASEBO,長崎
回次: 1
開催地: 長崎
開催日: 2021/10/16 - 2021/10/17
p. 135
【背景と目的】
脳卒中片麻痺患者において,膝伸展筋力は臨床上重要な評価指標のひとつである。歩行自立に対する麻痺側と非麻痺側,および両側を組み合わせた膝伸展筋力の基準値が報告されているが,回復期脳卒中片麻痺患者における基準値は明らかにされていない。本研究は,回復期脳卒中片麻痺患者の歩行自立における膝伸展筋力の実測値を体重で除した筋力体重比(kgf/kg)とモーメントアームを考慮した筋力トルク体重比(Nm/kg)のカットオフ値を明らかにすることを目的とした。
【方法】
調査対象は,2017 年1 月から2021 年3 月に当院に入退院した脳卒中片麻痺患者とした。除外基準は膝伸展運動が随意的に困難な患者,重度認知症,高次脳機能障害により指示に従うことが困難な患者とした。調査項目は年齢,性別,脳卒中分類(脳梗塞,脳出血),脳卒中発症から筋力測定までの日数,体重,Body mass index(BMI),下腿長,麻痺側下肢Brunnstrom recovery stage(BRS),膝伸展筋力(麻痺側:PKS,非麻痺側:NPKS,両側合計値TKS),FunctionalIndependence Measure(FIM)移動項目,歩行補助具・装具使用の有無とした。歩行自立の定義は,車椅子を使用せずに病棟内で歩行しており,FIM 移動項目が6 点以上の患者とし,歩行自立の可否により2 群に分類した。2 群間比較の検定はMann-Whitney のU 検定,χ ² 検定を実施した。歩行自立にPKS,NPKS,TKS が影響するかを検証するために,歩行自立の可否を目的変数とした二項ロジスティック回帰分析を実施した。共変量は臨床的観点から選定した。曲線下面積(AUC)は,PKS,NPKS,TKS のROC 曲線を使用して計算した。カットオフ値はYouden インデックスに基づいて決定した。いずれの検定も有意確率5%未満を有意差ありと判断した。統計解析はすべてEZR version 1.42 を使用した。
【結果】
解析対象者は658 名(年齢中央値74 歳,女性45%,脳梗塞73%,発症から筋力測定までの日数中央値113.5 日),うち歩行自立群393 名(60%),介助群265 名(40%)であった。自立群は介助群より有意に男性の割合が高く(P=0.005),年齢と発症から筋力測定までの日数は低かった(P
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究の計画立案に際し,事前に所属施設の倫理審査員会の承認を得た(R3-05)。本研究はオプトアウト形式を採用し,研究対象者および代理人が拒否する十分な機会を保障することによって倫理性を担保した。