九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2021
会議情報

種子島医療センターの特徴を活かした自宅退院支援
右前頭葉脳動静脈奇形による脳出血を発症した一症例
*甲斐 瑞生*早川 亜津子*駒柵 宗一郎*髙尾 尊身
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 136

詳細
抄録

【はじめに】

種子島医療センター(以下、本院)では急性期病棟・地域包括ケア病棟・回復期リハビリテーション病棟・訪問看護ステーション野の花にてリハビリテーションを提供し、さらに介護老人保健施設(以下、わらび苑)も併設している。対象の患者様はこどもさんから超高齢者で年代も様々で急性期から回復期、生活期の病期の方々へトータルリハビリテーションが可能です。また急性期担当理学療法士(以下、PT)と回復期担当PT・訪問担当PT 間での情報共有が可能であり、回復期・生活期の患者様の経過を急性期担当PT とフィードバックすることができる特徴がある。今回、重度脳卒中患者に対して本院の特徴を活かした介入を行うことで自宅退院が可能になった一症例を担当したので報告する。

【症例紹介】

71 歳男性 身長170.1cm 体重56.1kg 診断名:右前頭葉能動静脈奇形 入院前:妻と2 人暮らし。独歩でIADL 自立 趣味:ドラム演奏 現病歴:R2.10.X 朝浴室で倒れているのを発見。呼吸停止していたため救急要請しCPR開始。心拍・呼吸再開し当院搬送後、脳動静脈奇形からの右前頭葉皮質下出血と診断。<退院前レベル> JCS I -2、常食摂取、FIM38 点(運動27 点・認知11 点)SCP2.75 点 TCT62 点 FACT5 点

【経過】

X 日開頭式血腫除去術 X+16 日リハビリテーション開始 X+75 日脳動静脈奇形摘出術・骨形成 X+110 日回復期リハ病棟へ転棟 X+211 日自宅退院予定

【介入方法】

期間:X+7 日~ X+211 日(予定)介入時間:6 単位以上/ 日(週7 日) 連携:回復期転入前から急性期担当PT より数回にわたり申し送り実施。回復期転入後も状況に応じて家族・担当介護支援専門員(以下、CM)・医療ソーシャルワーカー(MSW)・訪問担当PT・わらび苑担当PT へ随時連絡を行う。

【介助方法(家族・セラピスト指導)】

退院調整を開始したX+187 日:妻へ移乗動作指導。X+190 日:訪問担当PT へ移乗動作指導。X+201 日:わらび苑担当PT へ電話にて申し送り実施。X+211 日(退院日):本症例自宅での担当者会議にリモートにて本院より急性期担当PT・回復期担当PT/OT/Ns・MSW 出席し経過を含めた情報共有行う。

【結果】

本院の特徴を活かすことで自宅退院が困難と言われている脳卒中患者1)でも家族と病院側の意向に相違なく関わることができ自宅退院を目指すことが可能となった。

【考察】

本院は、病期に伴う転院がないため本人・家族の意向を含めた情報共有がスムーズに実施され、転入前・退院前から担当間での情報共有や介助方法統一が可能であった。さらに本症例は退院後家族での介助が不安であったが訪問担当PTに相談し、退院日から訪問リハビリテーションを利用可能に調整できたことも今回自宅退院が可能になった要因と考える。

【おわりに】

今後も本院の特徴であるトータルリハビリテーションを島民の方々へ提供し、急性期・回復期・生活期のセラピスト間での情報交換を積極的に行っていきたい。コロナ渦で外出や外泊の制限がある中でも、リモートなど利用し出来る限り最大限の退院支援を更に行っていくことが必要と考える。

【参考文献】

(1)岡本 伸宏・増見 伸・他:回復期リハビリテーション病院におけるFIMを用いた自宅復帰因子の検討;理学療法科学27(2),2012

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究の計画立案に際し、事前に種子島医療センターの倫理審査委員会の承諾を得た( 承認番号R3-1 号)。また研究の実施に際し、対象者に十分な説明を行い、同意を得た。

著者関連情報
© 2021 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
前の記事 次の記事
feedback
Top