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【はじめに】
回復期リハビリテーション病棟では生活行為向上を促し患者の自宅復帰,社会復帰を目標にサービス提供している.対象疾患も様々であり,生活に何らかの介助を要している事例は少なくない.当院では地域の中でより安心して生活して頂くために,病院内では行えない動作と指導を自宅訓練として実際の環境の中で訓練を実施している.自宅訓練の目的は住み慣れた環境での安心した生活へスムーズに移行する為の支援であり,状態が安定し環境設定や動作介助が必要になる可能性のある者を対象としている.
【目的】
当院で行っている自宅訓練に対して患者・家族がどのように感じているのか把握するために,回復期病棟に入院した際に自宅訓練の経験のある者を対象にアンケート調査を行った.今後の方向性を明確にすることが出来たため,考察を加え報告する.
【方法】
当院回復期リハビリテーション病棟に入院時に自宅訓練の経験のある患者またはその家族を対象にアンケート調査を実施.質問項目は1.自宅訓練の認知度,2.自宅訓練を良いと思うか,3.効果があったか,4.自信がついたか,5.満足度,6.病院で行う訓練の目的の明確化,加えて家族へは自宅での生活への受け入れやすさなどを項目として挙げた.以上の項目を選択回答方式と自由回答方式で行った.
【結果】
実施した患者は50歳代~90歳代の男女で脳卒中や肺炎、整形疾患によりリハビリを受けていた.自宅訓練に対しては全体を通してポジティブな意見が多かった.患者自身の状態のズレを認識出来た点や実際に自宅で動作を確認する事によって出来る点と出来ない点が明確となり訓練に対するモチベーションが上がったことなどが挙げられた.更に家族からは現状が把握しやすく,実際に自宅での動作を確認出来た事で自宅に帰る事に対して受け入れやすくなった点などが挙げられている.しかしながら,自宅で思うように動く事が出来ず落ち込んでしまった患者や整理が出来ていない自宅内を見られる事に対して恥ずかしさを感じる者もいた.
【考察】
今回の調査で患者・家族の視点での自宅訓練に対する良点と問題点を確認することが出来た.患者にとって病院だけでの環境では自宅での動作を明確に把握できない点がある.機能低下により,これまでの能力とズレがどうしても生じてしまい患者とセラピストとの間での認識が相違してしまう場合も少なくない.患者・家族も含めたところでスムーズに在宅生活へ繋げるためには,実際に自宅で繰り返しの動作訓練や家族への指導が必要である.また,行かなければ確認できないこともあり,その後のリハビリテーションの進行に大きく関与してくる.リハビリスタッフを対象に行った第1報と同様に,退院後,安心して住み慣れた環境で直接支援が出来る自宅訓練が有効である事が分かった.?
【倫理的配慮,説明と同意】
アンケートに協力して頂いた患者・家族には説明と同意を行った.