2025 年 11 巻 p. 87-96
本稿では、有機合成化学・創薬化学の視点から、分析化学が「結果確認の道具」から分子設計と研究戦略を共に形作る共創パートナーへと進化して来た過程を俯瞰する。PROTAC 創薬における nMS・SPR による三者複合体解析、MS/MS バーコードを用いたDNA フリーライブラリー設計、LC/MS 条件から逆算したライブラリー構築、マイクロドロプレット反応やアンビエントイオン化による新規反応場の活用、誘導体化試薬・同位体標識合成・低吸着材料による感度・定量性の向上、日本発の PESI/DPiMS 及び MS-DIALを基盤とするデータ駆動型メタボローム解析などを取り上げる。これらの事例を通じて、「何をどの様に測れるか」が「何をどの様に合成すべきか」を規定し、合成と分析の境界が溶解しつつある現在地と将来像を論じる。