蝶と蛾
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クロミドリシジミ(鱗翅目,シジミチョウ科)の近畿地方 からの発見
津田 正太郎津田 元章矢後 勝也
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2019 年 70 巻 3-4 号 p. 95-97

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抄録

本種は日本と韓国のみに分布し,国内では東北地方の岩手県を北限として,関東,中部,中国地方,さらには南限となる九州の熊本・宮崎県境付近までの範囲に生息地が点在する.これまで近畿地方からは未記録であったが,今回,既産地から離れた兵庫県から本種の雄成虫1頭が採集された. 発見された環境は標高700 mほどの緩やかな山間部にキャンプ場や宿泊施設がある場所で,落葉広葉樹林沿いの遊歩道に続く建物脇の地面に止まっていた.周囲では樹高10~15 mほどのブナ科植物が多いものの,調査した範囲では食餌植物であるクヌギ・アベマキは確認できなかった.このことから本来の発生地は採集地点から少し離れている可能性もある.県内ではアベマキは広く自生するが,クヌギは薪炭材やシイタケ栽培の榾木として植栽された導入種であるために,クヌギの産地は散在的なようである. 本種の生息環境は里山的自然の広がるなだらかな丘陵地や火山性草原で,このような環境に見られる食餌植物のクヌギ・アベマキを主体とした暖温帯落葉広葉樹林帯にて局地的に産するが,近年では雑木林の伐採などの環境開発によって各地で減少傾向にある.ところが,一部の地域では最近の雑木林の管理放棄により,むしろ老齢木を好む本種にとって良好な環境が広がり,これに伴って分布拡大しているようにも見え,特に岡山県では勢力拡大が目立つ.そのために今回の記録も兵庫県と隣接する岡山県の産地から生息地を広げてきたことが考えられるが,最短の既産地から直線距離で70 km以上離れていることから,従来から生息していた可能性もある. その一方で,卵や蛹等が人為的に持ち込まれた可能性について考えると,近年ではシイタケ栽培が盛んになり,原木のクヌギをほぼ県外(主に福島県)から仕入れていることから,この流通ルートが本種侵入の要因にもなり得る.いずれにしても,今回の記録地やその周辺での今後のさらなる緻密な調査が期待される.

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© 2019 日本鱗翅学会
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