2010 年 50 巻 1 号 p. 55-66
本州中部においてコウベモグラMogera woguraがアズマモグラM. imaizumiiと競合し,分布を置換しながら前進している8地域においてトンネルのサイズ調査を行い,2009年時における前者のおよその分布先端を確定した.特に1959年に分布先端を確定してあった長野県内2河川流域のうち,木曽川上流においては上松付近において50年間に最大4.1 kmの分布拡大が認められた.他方,天竜川上流の支流小野川流域では最大2.4 km,本流域では最大16 kmの分布拡大が認められた.石川県金沢平野におけるコウベモグラの分布先端は,1998年における最初の調査以後の11年間に大きな変化はなかった.富士川流域では最上流部にある甲府盆地の下流約16 kmの峡谷に分布先端があった.静岡県・神奈川県にまたがる地域では,両県を分け南北に連なる山脈がコウベモグラの東進を妨げる障壁になっていることが明らかになった.