2017 年 57 巻 2 号 p. 307-313
本研究の目的は,人工種子を用いて種子の重さとニホンリス(Sciurus lis)による運搬行動との関係を定量的に明らかにすることである.2016年5月から11月にかけて愛知県名古屋市守山区東谷山を調査地とし,1 gから15 gまでの重さの異なる8種類の人工種子を給餌台に置いて,ニホンリスによる地上と樹上への運搬の割合と,それぞれ運搬される水平距離と高さを調べた.その結果,13 gまでは種子の重さとともに運ばれる割合が増加し,それ以降ではわずかに減少した.大きな種子は食べ終わるのに時間がかかり捕食にあう危険性が高まるために林内に運ばれたと考えられた.同様に,運ばれた距離もまた種子の重さとともに増加した.運搬距離は重さ13 gの人工種子で最大となり,平均は7.9 mであった.運搬した種子のうち樹上に運んだ割合もまた重さとともに増加したが,重さ10 gで最大となる曲線的な関係が得られたことから,重力に逆らって運ぶコストの影響が示唆された.樹上に運搬された高さについては,種子の重さとの間には有意な関係は得られなかった.