マーケティングジャーナル
Online ISSN : 2188-1669
Print ISSN : 0389-7265
論文
ワンランク上のブランド・コミットメントはどう形成されるのか?
─ 顧客の潜在ランクへの分類と拡張版投資モデルのブランドの適用 ─
相馬 敏彦清水 裕士
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2016 年 35 巻 3 号 p. 75-94

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抄録

顧客がブランドに対してもつ心理的コミットメントは感情的なもの,計算的なもの,陶酔的なものと多面的である。本研究では,これらコミットメントの多面性がどのような階層をもちうるのか,そして各階層への移行にはどのような要因が影響するのかについて実証的にアプローチした。9000人以上の自動車ユーザーを対象に調査を行い,ブランドへのコミットメントを多面的に測定した。潜在ランク理論を用いた解析の結果,無関心から感情的なものが高まり,次いで計算的,陶酔的へと移行し最終的に全てのコミットメントが高まるプロセスが示唆された。この妥当性は,行動的な指標との関連によって確認された。また,それは使用期間による影響とは独立していることも確認された。次に,多項ロジット回帰分析によって拡張版投資モデル変数が階層の移行に及ぼす影響をみたところ,ランクの進展に伴い顧客の評価対象の範囲が変化している可能性が示された。この結果は,データに階層性を想定せずに行った分析からは見いだされないものであった。マーケティング研究において,顧客を単に相互に独立したグループに分けるのではなく,ある順序性に従ったランクに分類することの有効性を示した。

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© 2016 The Author(s).
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