本研究の目的は,店舗内行動研究の2つの下位分野である動線研究,店舗感情研究の成果を統合した研究枠組みに基づき,快感情が快楽的価値の提供や衝動購買の促進だけでなく創造的購買を促進すること,創造的購買が長期的来店行動を促進すること,その結果として消費者と小売店の長期的関係構築に快感情が寄与することを明らかにすることである。
既存研究の検討から,店舗内行動研究の課題を整理し,課題解決のため心理学分野の快感情と創造性に関する研究成果を援用し,4つの仮説を構築した。百貨店の地下食品売場の来店客の調査データを基に仮説検証を行い,快感情が消費者の創造性を高めること,快感情は創造的購買を促進すること,動線長は快感情を考慮した場合,狭義の非計画購買に影響しないこと,創造的購買は消費者の長期的来店行動に正の影響を与えることが確認された。
小売企業,メーカーにとって計画購買を高めること,小売企業にとって衝動購買を高めることの重要性はこれまでも指摘されてきたが,快感情を通じて創造的購買を高めることが消費者と小売店の長期的関係構築に有用であることを明らかにした。