マーケティングジャーナル
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投稿査読論文
価格変更戦略の理論的フレームワークの構築
― 高価格戦略と低価格戦略の識別 ―
岩本 明憲
著者情報
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2020 年 39 巻 3 号 p. 89-103

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Abstract

本研究の一義的な目的は,価格戦略理論の一画を成す価格変更に関連して,既存研究の問題点を整理・指摘したうえで,短期の値上げ及び値下げに加えて,その延長線上に実現する長期の高価格戦略及び低価格戦略を全般的な価格変更戦略として包括し,これらの多様な価格引き上げと引き下げを識別・整序する包括的な理論的フレームワークを提示することである。この目的を果たすべく,まずは価格変更に関する既存研究をレビューすることで本研究の射程がこれまでの価格変更研究をベースとしながらも,それを拡張・発展させる内容であることを確認する。次にプロスペクト理論を用いて,短期と中期の価格変更を識別し,長期かつより高次の価格変更戦略として,高価格戦略と低価格戦略を位置づける。それを踏まえて,留保価格と販売価格の差異,そして価格変更のためのコスト及びそれらの変化に着目し,四つの短期・中期の価格変更及び長期的に実現する八つの高/低価格戦略を分類・識別する理論モデルとそれに該当する事例を提示する。

Translated Abstract

The main objective of this research is to formulate a new theory that comprehends the various types of price change strategies from the short-term to the long-term. In general, the theory of price in the field of marketing deals with pricing of new products/services and price changes of existing products/services. The analysis of price changes, however, has been limited to instant tactics, price cutting and rising in the short-term. Consequently, there has been no integrated theory of price changes. In order to overcome this limitation and to break through such theoretical circumstances, this research applies the prospect theory and identifies the short- and middle-term price change strategies at the first step. Furthermore, at the next step, the higher-pricing and lower-pricing (in other words, “selling at the market plus” and “selling at the market minus” in the context of a traditional marketing theory) that companies should achieve through long-time brand strategies or structural cost advantages are determined as a higher dimension of price change strategies respectively. Through these steps, the comprehensive price change model (CPCM) is derived by adopting two dimensions, “variations of the difference between the reservation price and the selling price (ΔPrΔPs)” and “variations of the average cost (ΔC)”. CPCM can divide several types of price increases and reductions into four quadrants and identify eight types of long-term price change strategies and four types of short-/middle-term price change tactics, of which the examples and characteristics are also explained in this research.

I. イントロダクション

1. 問題意識と研究の目的

マーケティングの4Psの構成要素である価格に関する理論研究の対象は,(主として新規の)製品・サービスに対する価格設定(プライシング)と既存の製品・サービスに対する価格変更1)とに大別できる。これまで,価格戦略理論2)の多くは前者に関して発展してきており,後者については単発的な値下げ(または値上げ)のパターンが現実の事例をなぞる形で紹介されるにすぎず,それらを体系的に整序する理論的枠組みは皆無に等しい。また,価格変更の分析対象は,あくまで短期的な値下げまたは値上げが中心であり,長期的に値下げをしないことで実現する「高価格戦略」や断続的な値下げを通じて実現する「低価格戦略」は価格戦略理論の中で明確な位置づけが与えられていない。それゆえ,マーケティングの基本的課題は(低)価格競争を回避し,広告やブランディングや製品差別化などの非価格競争を通じて「市場価格以上の価格(言い換えれば,高価格戦略)」を実現するか,さもなければ,コスト・リーダーシップに基づく低価格戦略を追求すべきである,という(マーケティング論における)支配的見解は,理論的基盤に乏しい格言の枠を出ない3)

加えて,高価格戦略と低価格戦略は明確に切り離されることなく,理論上は「奇妙な同居」を続けている。すなわち,コスト・リーダーシップを追求する企業も基本的には非価格競争を通じて競争優位とブランド・ロイヤルティを獲得しなければならないし,逆に,高価格戦略を実行している企業がコストの削減や競合他社との価格差に気を配っていないわけでもない。しかしながら,現状のマーケティング研究において,高価格戦略と低価格戦略を分ける明確な基準は需要の価格弾力性以外には見出されていないし,その説明は後述するように必ずしも十全ではない。

そこで本稿では,価格戦略理論の一画を成す価格変更に関連して,既存研究の問題点を指摘・整理したうえで,短期の値上げ及び値下げと,その延長線上に実現する長期のより高次な価格変更戦略としての高価格戦略及び低価格戦略とを全般的な価格変更戦略と定義し,これらの多様な価格引き上げと引き下げを識別・整序する包括的な理論的フレームワークを提示することを一義的な目的とする。それにより,マーケティング論の中でしばしば無定義に使用されてきた高価格戦略や低価格戦略という概念のみならず,俗に言われる「高級路線」や「薄利多売」といった一般的概念と,それ以外の破滅的な高/低価格戦略とを分かつ理論的基準を我々は手にするであろう。

2. 先行研究のレビュー

マーケティング論において価格変更は,価格設定(プライシング)の研究と比較すると数は少ないものの,多様な観点から研究されてきた。

(1) マーケティング論における価格変更の位置づけ

製品ライフサイクルの段階が移行するにつれて生じる値上げまたは値下げに関する議論の端緒としてMickwitz(1959)が指摘されており(Lilien & Yoon, 19884),近年の研究では,需要の価格弾力性の値と変化に基づきライフサイクルの各段階の最適な価格戦略が探索されている5)

Kotler(1967)では,「価格変更の着手」というタイトルで,それに対する顧客と競争相手の反応を説明したのち,価格変更に至る意思決定プロセスが描写されている。この枠組みは,Bennett(1988)Doyle(1994)Zikmund and d’Amico(2001)などでも踏襲され,直近のKotler and Armstrong(2016)でも大きな改訂は見られない。そこでは従来の説明を踏襲した「価格変更」という項目に加えて,後年に新たに追加された「価格調整戦略」という項目内で現金割引やアローワンスなどの短期的・単発的な値下げが説明されている。

価格設定(プライシング)研究において,価格変更は「新製品のプライシング」と対照する形で「既存製品のプライシング」として議論される場合がある。Gabor(1977)では,ブランド間競争下において価格変更がブランド選好とブランド・ロイヤルティに与える影響が分析されている。Hauser and Shugan(1983)は,既存ブランドの市場に強力な新製品が参入してきた場合の防御のための価格戦略を検討している。そこでは,とりわけ既存ブランドが強調する効能を持つライバル商品が低価格で販売されようとした場合に,価格を同レベルまで引き下げるという「防衛マーケティング戦略」が有効であると主張された。

全般的な価格変更戦略が比較的詳細に整理された研究としては,Jobber(1995)が挙げられる。そこでは,値上げ及び値下げの背景となる「事情」,「戦術」,「競合他社の反応を推定する材料」が整理され,さらに競合他社が価格を変更した際に追随または無視する条件,短期的及び長期的に必要とされる戦術,及びそれが有効となる諸条件が提示されている。

Nagle and Müller(2017)は,値下げを可能にする諸条件を「価格フェンス」と呼び,「顧客の認識フェンス」,「購入場所フェンス」,「購入時間フェンス」,「購入量フェンス」に細分化して議論を展開している。しかしながら,その内容は価格差別戦略を可能にする条件の考察であり,(動学的な)価格変更を想定したものではない。

小売業者による価格変更に関しては,Hoch, Dreze, and Purk(1994)において,長期にわたって低価格を維持するエブリデー・ロー・プライス戦略と短期のうちに価格を上下させるハイ・ロー・プライシングが売上と利益に与える影響について,何もしない戦略との比較を通じて明らかにされている。

Chen, Monroe, and Lou(1998)では小売業者の立場から価格変更戦略の特徴が明らかにされている。そこでは,自動車のような高価格帯の製品を扱う小売業者が値下げする場合には金額表示で,逆に食料品や日用品のような低価格帯の製品を扱う小売業者が値下げする場合にはパーセント表示で行う傾向にあり,その戦略が値下げ幅の大小によって変化する様が明らかにされている。これは,同一製品の値下げのプロモーション効果に関する研究であり,メーカー主体の価格変更戦略とは一線を画している。

(2) 既存研究における様々なタイプの価格変更戦略

Tellis(1986)では,「消費者の特性」と「企業の目的」という二軸に従い,「幾らかの消費者の留保価格が低い場合」かつ「顧客セグメント間で価格を変化させる場合」において「経時的ディスカウンティング」が有効であると説明されている。これは,当初は高価格を設定し,その後,徐々に価格を下げていく値下げ戦略であり,これには,純粋に同一の財ではなく近似した財(例えば,ハードカバーの書籍と文庫本など)の販売を通じて,異なる留保価格の消費者需要を時間の経過と共に獲得する戦略も含まれる。また,国外市場に代表されるように,主たる市場と全く異なる条件の市場での価格を低く設定する戦略は「第二市場ディスカウンティング」と分類されている。これらは,総じて消費者の留保価格及び市場参入時の(サンク)コストに着目した価格変更戦略と言い換えることができる。

Furukawa(1995)では,陳腐化のスピードが速い財に関して,品質の評価が困難な場合には「期間限定型プライシング」が,それが容易な場合には「競争価格型プライシング」が採用されると主張された。これらは,需要の変化ならびに競争によって価格変更が迫られることを前提としたプライシングであった。

Simon and Dolan(1996)は,「コストから発想するプライシング」ではなく「顧客価値から発想するプライシング」である「パワー・プライシング」を主題として掲げ,価格変更に関しても幾つかの有益な示唆を提示している。第一に,価格変更が需要量及び財一個当たりの「貢献利益」に与える影響,そして価格に変動費が占める割合を勘案したうえで,同じ利益を得るために必要な[許容できる]販売量の増加分[減少分]を典型的な曲線として明示した。これは,長期に亘って(または地域ごとに)価格を変更した際の消費者の反応を探る価格実験に応用されている。第二に,「プライシング・ゴールのマトリクス」では,四つのタイプの価格変更,すなわち,(1)高すぎる価格から最適価格に向けての下方の修正,(2)低すぎる価格から最適価格に向けての上方の修正,(3)最適価格からの値下げ,(4)最適価格からの値上げ,が企業の利益と販売量に与える影響が考察されている。

Dodds(2003)では,消費者の相対的知覚価格が低く,相対的知覚品質が中程度の場合には「バーゲン」が行われていると説明されており,両者の差を広げることによって「スーパーディール(超お買い得)」へと移行し,価格―品質―価値の関係を強化するために,価格を下げ販売数量を増やしコストを下げるという「価格―品質サイクル」が提唱されている。

Kubota(2008)は,固定費と変動費の違い及び他の商品の利益率に着目し,原価計算に基づいて正当化される価格変更(「疑似出血価格」)とそうでない「真正出血価格」とを分類・整理している。加えて,企業側の都合による価格変更は消費者側の論理とは異なるという視点から,(二極化する)顧客満足度を満たす様々な差別化戦略が提唱されている。

Kanno(2013)では,顧客ごとに異なる需要に対応する形で価値を創造し,最適価格を設定する「顧客価値創造プライシング」を提唱し,優良顧客の知覚価値と知覚対価とが均衡している状態からより前者が上回る状態へと移行するための手法が紹介・推奨されている。ただし,価格変更に関しては,価格戦争に巻き込まれないために差別化による付加価値の創出とそのための心構えのみが提唱されている。

(3) 短期の価格プロモーション研究と動学プライシング

短期的な価格変更によるセールス・プロモーションと内的参照価格の影響についてはKalwani and Yim(1992)において,値引きの頻度と内的参照価格の関係が原点から見て緩やかな逆S字に,値引きの幅と内的参照価格の関係が緩やかな凸型になることが実証分析を通じて明らかにされている。これを応用してShirai(2006)では,値引き幅と値引きの頻度とバリエーションの交互作用が内的参照価格に与える影響が分析されている6)Moriguchi(2002)及びSugita, Ueda, and Moriguchi(2005)では,様々な消費者の心理や知覚(ブランドに対する消費者の選好度や反応度,消費者ごとに異なる参照価格や受容価格や需要の価格弾力性)の違いを前提に,価格プロモーション(短期の値引き)が利益や売上や市場シェアに与える影響が実証的に分析されている。

また,近年のインターネット及び電子商取引の発展に伴い,価格変更の頻度や幅,需給条件の変化や競合他社の戦略の変更に即応した「動的プライシング」の研究が生起し(Ng, 2008),実証または実験的研究が発展している。Raju and Zhang(2010)では,商品の値札に全米価格と店舗でのその日の販売価格,そして以後十日間隔で付け替えられる予定価格の三つを同時に表示するという米国衣料品店の自動値下げシステムが紹介・分析されている。価格変更研究に包含可能であろうこれらの研究は,短期の小幅な値上げまたは値下げに着目しており,これまでの価格戦略理論の文脈で説明されてきた「需要ベース・プライシング」の発展形と見なすことができる。

3. 本稿の構成

本稿の構成は以下のとおりである。次節(II)では,価格変更戦略の理論的基盤を整備すべく,プロスペクト理論に関連づけて短期の価格変更戦略のメカニズムを確認し,中期の価格変更戦略を同定する。さらに,長期の不断の価格変更戦略の帰結としての高/低価格戦略に関して,需要の価格弾力性に基づく説明の問題点を明らかにしたのちに,価格変更の出発点となる複数の基準について考察する。こうした議論を踏まえて,第三節(III)では,短期及び長期の価格変更戦略を分類・識別する新たな理論的フレームワーク(包括的価格変更戦略)を提示・解説し,それぞれに該当する具体例を指摘する。そして,最終節(IV)で結論を提示する。

II. 価格変更戦略の理論的基盤

1. プロスペクト理論と価格変更戦略

企業にとって,コスト構造や製品・サービスの性質や品質,競合他社の戦略などが一定である期間において価格を変更する際に考慮すべきは,製品・サービスの値上げまたは値下げが消費者心理と消費者需要に与える影響である。これらの検討には,実際上の利得または損失額の変化が消費者効用に及ぼす影響を描写したプロスペクト理論が有用である。

図表1(a)は,最も典型的なプロスペクト理論である。ここでのポイントは二つある。第一に,消費者はプラスの利得よりもマイナスの損失を過大に評価する。このことは,図表1(a)において100円の値下げによって消費者が獲得する正の効用(嬉しさやお得感)を,100円の値上げによって消費者が被る負の効用(出費の痛みや損をした気分)の絶対値が上回っていることによって表現される。第二に,利得・損失とも,横軸のプラス幅またはマイナス幅が広がるにつれて効用のカーブが緩やかになっている。なお,原点は消費者が製品・サービスの価格を評価する基準点(参照点)を表している。

図表1

プロスペクト理論と短期及び中期の価格変更

消費者は購入予定の製品・サービスの価格が引き下げられれば,値下げ分の経済的利得に加えて心理的な効用(安く入手できたという満足感や幸福感)を得る。逆に,値上げによる効用の損失は相対的に大きいため,値上げの意思決定はより慎重に行う必要がある。

このシンプルなプロスペクト理論に価格受容域の概念を導入したのが図表1(b)である。価格受容域と呼ばれる参照点前後の一定の範囲では,利得または損失がもたらす消費者効用の増減が比例的に描かれる。これは,変更された金額分のみが消費者効用の増減に影響を与えていることを意味している。

このときの短期における価格変更可能な幅は図表1(b)のXYで表される。言い換えれば,価格受容域の下限であるXを超えた値上げは消費者効用の大幅な低下を招き,逆に,Yを超えた値下げは,消費者効用の逓減が始まるために,企業にとって利益の犠牲に見合うだけの消費者効用の上昇が見込めない。

次に,競合他社が代替的な製品・サービスの価格を変更した場合を考えてみよう。このとき,外部環境を所与とする短期とは異なるステージへと移行する(便宜上,「中期」と定義する)。

図表1(c)と(d)は,代替財を生産する競合他社の値上げまたは値下げに対応して,ある企業が価格を変更した際の典型的な消費者の効用の変化を表している。全ての消費者は競合他社の値上げまたは値下げを知っていると仮定する。無論,対象となる製品・サービスの元の価格の多寡や消費者の所得水準などによって勾配や形状は異なりうる。

図表1(c)は,競合他社が値上げしたケースである。このとき,価格を据え置くだけで消費者はある程度の満足を感じると考えられる。便宜上,価格受容域は競合他社と同額の値上げから価格据え置きまでの範囲が含まれている。もしも競合他社が何らかの内的要因ゆえにやむをえず値上げしたならば,価格を据え置くだけでも競合他社から相当なシェアを奪うことができるであろう。

次に図表1(d)は,競合他社が値下げしたケースである。この場合,値上げは「もっての外」であるだけでなく,競合他社と同額の値下げを行うまでは,消費者効用の上がり方は鈍いと考えられる。したがって,妥当な価格変更の余地は,競合他社と同額の値下げから,値下げの効果が逓減を始める地点までの比較的狭い範囲に限られるであろう。

2. 需要の価格弾力性と価格変更戦略

企業の断続的なプライシング及び価格変更を通じて長期的に実現する「高価格戦略」と「低価格戦略」は,しばしば需要の価格弾力性の概念を用いて説明され,経済学またはマーケティング論の標準的なテキストでは,需要が非弾力的な場合には高価格戦略が,弾力的な場合には低価格戦略が有効と説明される7)。そして,この示唆は,短期の値上げ及び値下げ戦略にも還流しており8),このとき,高価格戦略及び低価格戦略は短期の価格変更戦略と同様の意味を持つ。

しかしながら,需要の価格弾力性に基づいた高[低]価格戦略に関する上記の提言にはシンプルな陥穽がある。非弾力的な[弾力的な]需要は価格の下落に伴う販売数量の増加幅が比較的小さい[大きい]ことを意味するが,仮に企業が利潤最大化を目指すならば,非弾力的な[弾力的な]需要曲線を想定した価格は一意に決まるため価格変更の余地は生じない。加えて,高価格[低価格]の基準も明確ではなく,非弾力的な需要曲線上で一意に決まる価格が,弾力的な需要曲線上で一意に決まる価格を下回る可能性もある(図表2)。このとき,高価格戦略と低価格戦略は「高低」の基準を失い,かつ値上げも値下げも行われない9)

図表2

需要の価格弾力性と高/低価格戦略

筆者作成。

3. 価格変更の基準点(「高低」の判断基準)

上記の問題を解決するためには,高価格戦略と低価格戦略は何と比べて「高い」または「低い」かを考察する必要がある。すると,価格変更の前提には複数の異なる基準が暗黙に想定されていることが明らかになる。

一つめの最も基本的な基準は,ある製品・サービスに以前付けられていた価格である。多くの既存研究が想定する短期の価格変更戦略は基本的にこれを基準にしている。これに基づく長期的な価格変更のためには,値上げまたは高価格戦略であれば自社の製品・サービスの品質の向上が,値下げまたは低価格戦略であれば抜本的なコスト削減が不可欠である。

二つめの基準は,自社の標準的な製品・サービスの価格である。これを基準にした高価格戦略がプレミアム価格戦略であり,低価格戦略はセカンドライン価格戦略(低価格帯へのライン拡張戦略)と呼ばれる。既存の価格戦略の文脈では複数財のプライシングがこれに該当する。いずれにしても,こうした高/低価格戦略が効果的であるためには,自社の標準的製品・サービスが強いブランド力を持っていなければならない。さもなければ,メインブランドのコア・コンセプトが曖昧になってしまい,共倒れになるリスクが高まる。

三つめの基準は,競合他社が提供する標準的な製品・サービスの価格である。これは,一般的な市場価格と言い換えることができる。市場において定番の製品・サービスやブランドが既に存在する場合,それに対抗する有効な手段は,既存のものよりも高品質なものを高価格で販売するか10),逆に同程度またはやや低い品質のものを圧倒的な低価格で販売することである。とはいえ,前者の高価格戦略は,消費者からの信頼が乏しい新規参入者では採用が難しく,また,後者の低価格戦略に関しては,支配的な他社の製品・サービスが高い市場シェアを背景に規模の経済性によって低価格を実現しているならば,劣勢を強いられるであろう。本稿冒頭におけるマーケティングの「格言」が想定するのは,この種の(長期的に実現する)高/低価格戦略であると言える。

最後の四つめの基準は,革新的な新しい製品・サービスに対して消費者が直観的に思い浮かべる「値ごろ感」である。消費者は,これまで存在しなかった製品・サービスの価格が高いか低いかの明確な判断材料を持たないがゆえに,メーカーや流通業者は,消費者が「値ごろ」と感じる価格帯を事前に想定したうえで,それにできるだけ適合させるか,さもなければ,それよりも高い(または低い)価格を設定し,消費者需要とのギャップを各種マーケティング活動を通じて埋めなければならない。このときの高価格戦略は,(i)高額な研究開発費や生産費用を反映したスキミング価格戦略,(ii)高価格であるがゆえに高品質であると消費者に認識させることを目的とした威光価格戦略,(iii)競合他社や代替財が存在しないがゆえに設定される独占価格,という三つのタイプに分類できる。逆に,低価格戦略は,革新的なビジネスモデルに基づくコスト・リーダーシップ戦略の成果であり,その目的としては,大量販売による規模の経済性の獲得,売上高の増大,マーケットシェアの拡大などが挙げられる。いずれにしても,そこで設定された当初の価格は,潜在的参入者にとってターゲットに据えられる可能性が高いので,競合他社の追随を未然に防ぎつつ,高い利潤を確保し,かつその後の断続的な価格変更を必要としない水準に設定することが求められる。

III. より包括的な価格変更モデル

1. 留保価格と販売価格の関係

価格は,製品・サービスの最終的な価値を反映しており,生産費用のみならず,製品化から市場での販売までに要した様々なマーケティング費用を内包していなければならない(コスト度外視のプライシングは持続不可能である)。したがって,あらゆるプライシングは,製品化から販売(更にはアフターサービス)までのあらゆる費用を反映したものと言える。

生産及びマーケティング活動の結果として設定された価格が,その製品・サービスの購入から顧客が得る効用(言い換えれば,その対価として支払っても良いと考える最高価格を意味する「留保価格」)を下回っているならば,売り手(企業)と買い手(消費者)との間で取引が成立する。すなわち,企業が持続的成長のために利益を継続的に獲得するためには,自社の製品・サービスに関して「留保価格(Pr)>販売価格(Ps)」という関係を長期にわたって継続させることが条件となる11)

上記の条件を実現・維持するための基本的なスタンスは,留保価格と販売価格の差(PrPs)をできるだけ広げることである12)。なぜなら,販売価格が顧客の留保価格をかろうじて上回っていたとしても,競合関係にある製品・サービスがその差を大きく上回っているならば,顧客を奪われる恐れがあるからである。その方法には,Prの引き上げまたはPsの引き下げが必要であるが,両者を同時に実現することは難しい。現実的には,Psの上昇分以上にPrを引き上げるか,Ps(またはその前提となるコスト)の減少分以下にPrの減少を留めるかのどちらかになる。

2. 顧客価値を高める二つの方向

PrPsの差を広げる方向は二つある。第一に,留保価格(Pr)の引き上げである(⊿Pr=Pr(After)Pr(Before)>0)。顧客の留保価格を高めるためには,差別化やブランディングや高機能化,そしてその他の様々なマーケティング活動によって新たな価値を創出しなければならない。当然ながら,コストをかけることなく価値を創造し,かつ長期間持続させることは非常に困難であり,コストの増加は利幅の減少または価格の上昇を招く。したがって,利益を犠牲にすることなく顧客価値を創造し,PrPsの値を拡大するためには,コストの増加及びそれに伴う価格の上昇分を上回る価値の創出が求められる。

PrPsの値を拡大する第二の選択肢は,販売価格(Ps)の引き下げである(⊿Ps=Ps(After)Ps(Before)<0)。販売価格を引き下げるためには,コストを下げるか,さもなければ自社の利益を犠牲にしなければならない。もしPsの減少分より製品・サービスの価値の減少分を小さく抑えることができたならば,低価格戦略によって需要の増加とより大きな市場の獲得が可能になる。より大幅なPsの引き下げのためには,抜本的なコスト削減が不可欠であり,逆にコスト優位性を背景としない低価格戦略は競合他社に追随されやすく,最終的には互いの利益を犠牲にした「血で血を洗う価格競争」へと陥る。

3. 顧客価値を高めるための具体的方法

(1) 値上げの場合

Psの引き上げに関してPrPsの差が拡大する状況は,以下の二つが考えられる。第一に,Psの引き上げが(供給能力の限界を前提とした)需要の一時的な高まりに対応したものである場合である(消費される時間の差異を利用した「ピークロード価格差別戦略」がこれに該当する)。このとき,需要の高まりはPrの高水準での維持を可能にし,値上げは許容される傾向にある。第二に,Psを引き上げても競合他社に顧客を奪われないほど強いブランド・ロイヤルティを確立している場合である。理想的には,高級であることが顧客の満足感や信頼感を高めるようなブランドの確立に成功すれば,コスト増加に伴う値上げや消費者の値ごろ感を上回る高価格帯での新製品の投入は許容されがちである。また他の企業には到底真似できない技術を反映した素材や部品の値上げは,とりわけ完成品の品質を決定的に左右する場合には許容される可能性が高い。

(2) 値下げの場合

次にPsの引き下げに関してPrPsの差が拡大する状況は,以下の二つが考えられる。第一に,Psの引き下げが需要を一時的に喚起する場合である(ランダムまたは定期的に実施される特売セールがこれに該当する)。ただし,これは利益を犠牲にした値下げであり,値下げの恒常化や競合他社の対抗的措置に伴って需要拡大効果が逓減するにつれて効果を失ってしまう。第二に,Psを引き下げても競合他社が追随できないような,圧倒的なコスト優位性に基づく価格引き下げである。すると,比較的多くの消費者は,類似した製品・サービスと比較して低価格なのに品質はそれなりに優れていると見なすため,大幅かつ持続的な需要増加が見込まれる。

(3) 消極的な方法

他方で,たとえ両者の差を縮めることになってもPsの引き上げまたは引き下げによって,利益を獲得する(少なくとも,持続的経営に必要な利益を確保するという消極的な)方法も考えられる。第一に,値上げに関しては,ニッチ市場や,全般的な評価が定まらない斬新な製品・サービスにおいて見られるように,新規性・稀少性・特殊性が高いがゆえに顧客数が相当少なく,かつ需要の価格弾力性が極めて低い場合に,Psの引き上げが許容されうる(例えば,新製品に関する「スキミング・プライシング」はこれに部分的に該当する)。このときの価格引き上げは,元々その製品・サービスに全く関心がない大多数の消費者にとっては「どうでも良い」ものであり,一部の熱烈な顧客にとってのみ「なくてはならない」価値ある品質向上(または仕様変更)と見なされる余地がある。

第二に,値下げに関しては,たとえ多くの人から「安かろう悪かろう」と見なされたとしても,ごく一部の人からは熱烈に支持されるような場合に,Psの引き下げが許容されうる。とりわけ,既存の製品・サービスに付随する外延的要素の多くを削ぎ落し簡素化することで実現する価格の大幅な引き下げは,新たな需要を開拓し,たとえ利幅は小さくとも利益を獲得・確保できる余地を生み出す。

4. 包括的価格変更識別モデル

(1) モデルの仮定

PrPsの関係に基づき高価格戦略と低価格戦略を分類・識別したのが図表3である。横軸は平均コスト(製品・サービス1単位当たりの費用)の変化を示しており(⊿C=CAfterCBefore),⊿C>0はコストの増加を意味する。コストの増減には,品質の大幅な改善のための生産体制の抜本的見直しや,規模の経済に伴う平均コストの低下を可能にする生産設備への大型投資を含む固定費の変更に加えて,製品の微細な修正・調整のために追加的にかかる生産コストや,製品の価値を消費者に首尾よく伝えるためのマーケティング・コストなどの変動費の変更が想定されている。当然ながら,⊿Cの値が大きくなるにつれて,固定費が締める割合は増えると考えられる。図表の原点は本稿IIの3で議論した四つの「基準点」を含んでおり,横軸上の点との水平距離は,新たな価格と基準点との差分を表している13)

図表3

包括的価格変更識別モデル

縦軸はコストの変化によってPrPsの差が広がったか狭まったかを表している。原点よりも上側(⊿Pr−⊿Ps>0)は,コストの増減によって両者の差がさらに広がったことを示している。別の言い方をすれば,これは消費者余剰の拡大を意味しており,逆に種々のコスト及びそれに伴う価格の変更に伴って両者の差が縮まった場合(⊿Pr−⊿Ps<0),顧客の愛顧心は薄れ,競合他社にとって付け入る隙が生じる。

モデルは,自社製品の仕様や品質や生産数量などが所与の短期,他社製品の価格の変更が想定された中期,そして,自社製品に関する技術革新やプロセス・イノベーションなどを含むあらゆる要素が変更可能な長期までが含まれている。

(2) 高価格戦略の四つのタイプ

第一象限(①と②)は「利益創出型高価格戦略」と呼びうるものである。そこではコストの引き上げによって留保価格と販売価格の差が広がっている。とりわけ①の「利益拡大型」は最も理想的な高価格戦略であり,コスト増による価格の増加分を上回る価値が創出されている。②は,価格の上昇分以上の留保価格の引き上げには成功しているものの,新たに創出された顧客の価値(⊿Pr−⊿Ps)がそのために要したコストを下回っているという意味では相対的に有効でないことが見て取れる。とはいえ,自社の利益を確保している点では有効な高価格戦略と考えられる(「利益確保型」)。

第一象限の真下に位置する第四象限は,コスト増による価格の上昇分を上回る留保価格の引き上げに失敗しており,消費者の支持を失うという意味において「需要喪失型高価格戦略」と総称できる。最も悲劇的なのは④の「需要無視型」であり,コストまたは価格の上昇が消費者に与える悪影響を顧みない無謀な高価格戦略である14)

本来,消費者が感じる価値を損なう高価格戦略は避けるべきであるが,ごく限られたケースでは有効と考えられる。それが③の「マニア対象型」である。そこでは,Psの引き上げによって多くの需要を失う半面,ごく限られた需要に対して高価格を付与することが可能となっている。すなわち,価格の引き上げによって多くの消費者需要を失ったとしても,それでも留保価格が販売価格を上回っているごく一部の消費者に対して高価格を課すことによって限定的な愛顧の獲得に成功しており,企業にとって利益の増加につながる可能性が残されている。

(3) 低価格戦略の四つのタイプ

次に低価格戦略に目を向けてみよう。第二象限に位置する「利益削減型低価格戦略」では,基本的に,コスト削減に伴う(それと同時にしばしば生じる品質や価格の低下に伴う)留保価格の低下を価格の減少分以下に留めることによって(または,留保価格を下げることなく販売価格のみを引き下げることによって)新たな需要を創出し,製品・サービス1単位当たりの利幅の減少を大量販売によってカバー可能なケースが想定されている15)

中でも⑤の「需要拡大型」は理想的であり,コストおよび価格の引き下げによって留保価格が変化しないか,または減少幅が非常に小さい可能性を示唆している。こうした低価格戦略は,コスト・リーダーシップ(競合他社に対する圧倒的なコスト優位性)の実現を通じて可能となる。コスト・リーダーシップは,(i)規模の経済と範囲の経済,(ii)経験効果,(iii)サプライ・チェーン・マネジメントを通じた物流・流通の効率化,そして(iv)その他の革新的なビジネスモデルの開発などによって実現可能と考えられる。

⑥の「利益犠牲型」は,コスト削減によって⊿Pr−⊿Psの拡大に成功しているものの,創出される価値の増加分が十分ではなく,結果として総利潤を減らしてしまっている。言い換えれば,この種の低価格戦略は,差別化要因に乏しいがゆえに競争が激しい産業においてやむを得ず採用される傾向にある。

第三象限の「品質犠牲型低価格戦略」は,コストの引き下げ(及びそれに伴う価格の引き下げ)によって品質及び留保価格が大幅に低下する場合を指す。このとき,留保価格はコストの減少分を上回る大きさで低下し,いわゆる「安かろう悪かろう」の状況が生じる。

そのなかで,採用の余地が残されているのは⑦の「機能削減型」である。これは,LCCに代表されるように,メインの製品・サービスに本来的に付随する機能やパーツを大幅に削減したり簡略化・有料化したりすることによって,低機能または低品質な製品・サービスを圧倒的な低価格で販売する戦略である。この場合,顧客の留保価格が大幅に下落するものの,⊿Pr−⊿Psの減少分はコストの減少分以下に抑えられているため,一定の需要を確保することができる。言い換えれば,安いことのメリットが悪いことのデメリットを上回っている場合に,こうした低価格戦略が合理的でありうる。ただし,その製品・サービスに関して顧客が最も重視する部分の品質(例えばLCCであれば,安全性や確実な運航)が疎かになってしまうと,低価格による需要増加が見込めなくなる恐れがある。

最後の⑧「劣悪型」は,コスト削減によって,コストの減少分を遥かに上回る価値が喪失し,たとえ価格を大幅に引き下げたとしても顧客からは見向きもされない状況を表している。

(4) 短期(または中期)の価格変更の四つのタイプ

四つの象限に対応した短期または中期の小幅な価格変更戦略は図表3(a)の原点周辺に配置されており,それを拡大したのが図表3(b)である。まず値上げに関して,⑨は需要の急激かつ過度な高まりに伴う値上げ(すなわち,消費者の留保価格が高まっている状態下での緊急的な値上げ)を表しており,経済学的には需要曲線の上方へのシフトによる価格の上昇と言い換えられる。⑩は原材料費の高騰や増税を反映した値上げ(言い換えれば,消費者からすると割高感を覚えやすい値上げ)であり,経済学的には供給曲線の上方へのシフトに伴う価格の上昇と説明できる。

次に値下げに関して,⑪は需要刺激策としての単発的または周期的な値下げや,競合企業の値下げに対抗した価格切り下げであり,需要曲線上での価格の下方へのシフトを意味する。需要の価格弾力性に関して言及される値下げはこれに該当し,いわゆるベルトラン競争が繰り広げられる。⑫は賞味期限直前の商品の割引や「訳あり品」の処分セールなど,品質の劣化に伴って実施される値下げであり,需要曲線の下方へのシフトに伴う価格の下落と言い換えることができる。

(5) 長期の高/低価格戦略の具体例

①は,競合他社が模倣・追随できない差別化要因(具体的には,高い技術力や特許,唯一無二のブランドや卓越したデザインなど)に基づく高価格戦略であり,顧客は喜んで高額な製品・サービスを購入する。数百万円するようなバッグや時計(エルメスのバーキンやフランクミューラーの高級時計),数千万円もする高級車(フェラーリやロールスロイス),アップルのアイフォンなどが代表例である。俗に言う「白馬に乗った王子様」は引く手あまたの存在で,あらゆる犠牲を払ってでも手に入れたいと願う人は後を絶たない。

②は,飛行機のファーストクラス,1泊数十万円以上するような高級ホテルやそのスイートルーム,席代だけで数万円もする高級クラブなどが典型的な例である。こうした「高飛車な」価格設定は,品質向上のためのコストの増加分を上回る高い価格が設定されることがしばしばであるが,富裕層にとっては他の選択肢が限られているため,彼らは割高と感じながらも留保価格を大きく下げることなく高価格を受け入れる傾向にある。こうした高価格戦略は,とりわけ供給能力に限界がある場合に見られる。

③は,マニアやオタクと呼ばれる人のように,特殊な嗜好を持ち,かつ数が限られている消費者をターゲットにする場合に時に有効である。彼らは特定の製品・サービスに対して極めて強いこだわりや執着を持っており,一般消費者が見向きもしないコスト度外視の細部の改善・改良に対しても好意的な傾向にある。例えばクラシックカーは,燃費が悪く,すぐに故障し修理代も高額であるため大多数の消費者には見向きもされないが,一部のマニアには「垂涎の的」であり,細部のこだわりを反映した仕様の変更や,忠実な再現のための修繕・補修によって価格が大幅に上昇したとしても,それが受け入れられる可能性がある。他にも,マニア以外は「タダでも要らない」数万円もするアニメキャラクターのフィギュア,機能や利便性とは無関係の数百万円もする木製自転車などがこれに該当する。

対照的に,④は誰にも見向きもされない高価格戦略であり,しばしば浪費や怠慢,高慢や勘違いなどが原因で高価格が設定される。自身が顧客に与えられる価値を顧みず,相手に要求する水準ばかりが高くなってしまったときの結末は悲劇的である。

⑤は,競合他社が模倣・追随できないコスト・リーダーシップに基づく低価格戦略であり,マス・マーケットの獲得・創出を可能にする。「エブリデー・ロー・プライス(EDLP)」という概念及びその実践は,この種の低価格戦略を意図・反映したものと言える。また,革新的なビジネスモデルや新しい製品・サービスによって業界の勢力図を大きく塗り替えることに成功した「価格破壊者(ユニクロやイケアなど)」が採用する低価格戦略もこれに該当し,とりわけニトリの「お,ねだん以上。」というキャッチコピーはこれを象徴している。

⑥の低価格戦略は,差別化に乏しい製品・サービスでしばしば採用される。この場合,主として自社の利益を犠牲にして競争相手の価格に対抗した価格引き下げが実施される。品揃えに特徴のない小売業者による特売セール,ガソリンスタンドや牛丼屋による断続的な値引き合戦,ブランド力に乏しい中小メーカーの低価格戦略などがこれに該当する。⑦は,機内食の有料販売やカウンターチェックインの有料化,機体のリースなどを通じて格安運賃を実現しているLCCや,古くはカプセルホテル,セルフ方式を採用したファストフード店や一皿100円の回転寿司屋,近年では格安スマホなどがこれに当てはまる。比較的多くの消費者に「安かろう悪かろう」と認識されたとしても,「(美味しい)ジャンクフード」を愛好する消費者は確実に存在するのである。

⑧は,悲劇的な低価格戦略であり,低価格を志向するあまりに製品・サービスにとっての根幹となる価値を著しく毀損してしまった「欠陥住宅」のようなものである。

図表4

高価格戦略と低価格戦略の分類と具体例(まとめ)

IV. 結論

1. 本稿の貢献

(1) 学術的インプリケーション

本研究の学術的貢献は以下の二点に要約できる。第一に,価格変更が示唆する短期の値上げ及び値下げ戦略,競合他社の価格変更に対応した「中期」の価格変更,そしてそれらの価格変更の延長線上に位置づけることが可能な長期の価格変更としての高価格戦略と低価格戦略のそれぞれを識別・整序することによって,従来の価格変更理論が見落としていた関連する諸概念を結びつける包括的な理論的基盤(包括的価格変更戦略モデル)を整備・構築したことである。

本稿での既存研究のレビュー(とりわけIの2(1))からも分かるとおり,これまで価格変更戦略は,マーケティング論またはプライシング理論の中で必ずしも明確な位置づけを与えられてこなかった。また,短期と長期の価格変更,そして高価格戦略や低価格戦略といったメタ概念が混然一体のものとして議論されてきた。同時に,本稿Iの2(2)からも分かるとおり,様々な個別の価格変更戦略が提唱されているものの,それらは価格変更に関する既存研究の延長線上に位置づけられるというよりはむしろ,価格変更戦略の様々なパターンを描写・紹介したにすぎず,その理論的全体像や相互の関連が説明されることはほとんどなかった。本稿が提示したモデルは,これらの様々なタイプの価格変更戦略を包摂する理論的枠組みであり,価格変更の基礎的理論としての役割を果たしている。このような一般性の高い理論的枠組みは既存研究の中には見当たらない。

第二に,高価格戦略と低価格戦略の様々なバリエーションを,留保価格と販売価格との差の増減に着目して明確に分類・識別したことにある。これまで,価格を変更すべきか否かの意思決定の規定要因は,需要の性質(需要の価格弾力性)や競争相手の反応などが個別に語られる傾向にあった。

本稿Iの2(2)で述べたように,Dodds(2003)では,(本モデルと同様に)消費者が知覚する品質と価格との差に着目し,その差を広げることが顧客価値を高めることが主張されているが,こうした顧客価値に基づく議論が価格変更と明確に結びつけられることはなかった。Dodds(2003)が提唱した「価格―品質マトリクス」及び「価格―品質サイクル」は,本稿のモデルに通じる発想を提供しているものの,基本的には規模の経済に基づく低価格戦略を描写しているにすぎず,低価格戦略と高価格戦略とを分かつ基準を提供していない。本稿のモデルは,価格と品質に基づく顧客(が感じる)価値を,留保価格と販売価格の変化に着目することによって描写し,高価格戦略と低価格戦略を分別している意味において,より十全なモデルであると主張できる。

(2) 実務的インプリケーション

本稿が提示した包括的価格変更モデルは,マーケティング研究者だけでなく,絶え間ない価格(変更)戦略やブランディングを通じて長期的なブランド・ロイヤルティの形成を目指す高/低価格志向の企業のマーケターにも有益な戦略的指針となるであろう。プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント・モデルが複数財の製品戦略を考えるブランドマネジャーまたはマーケターにとって理論的指針を与えるのと同様に,本稿のモデルもまた,複数財を抱える企業のプライシング戦略,延いては長期的視野に立ったブランド戦略にまで適用しうる理論的枠組みである。現在のところ,実務家を含めて我々が価格変更の目的と方向性を学習・理解する際に指針となる基礎理論を主要なマーケティング論や価格戦略論のテキストの中に見出すことは難しく,本稿のモデルはその有力な候補になりうる。本モデルの構成要素である留保価格,販売価格,コスト(及びそれらの変化分)はどれも測定可能な尺度であり,今後,データの蓄積及び実証分析が進むことによって,企業の価格戦略にとって単なる理念系に留まらない実務的に重要なモデルへと発展することが期待される。

2. 残された課題

上記のような貢献が考えられるものの,本稿における包括的価格変更モデルは課題も抱えている。第一に,とりわけ長期的な価格変更では様々な外部環境(の変化)が企業の意思決定に影響を与えている可能性がある。現状では,その影響は留保価格及びコスト(の変化)に暗黙に包含されているが,それらをどのように切り離し,価格変更との因果関係を明確にするかという課題が残っている。第二に,顧客の留保価格はセグメントによって大きく異なる可能性がある。とりわけ③の「マニア型」と⑦の「機能削減型」の価格変更が正当化されうる余地は,一つの顧客セグメントの留保価格の変化ではなく,あるセグメントから別のセグメントへのシフトによって生じている。このように本モデルにおける留保価格にセグメンテーションという概念を導入すると,モデルが想定すべき状況はより複雑なものになるであろうし,モデルの発展につながるかしれない。これらの課題については,更なる研究を要する。

1)  他にも「価格バリエーション」と表現される場合もあるが(Rewoldt, Scott, & Warshaw, 1973),意味する内容は基本的に同一であるため,本稿では「価格変更」に統一する。

2)  本稿では,経済学分野の「価格理論」との混同を避けるためだけでなく,価格変更と対を成す概念としてしばしば用いられるプライシング(価格設定)と区別するために,価格設定と価格変更の双方を包括するより高次の概念として「価格戦略理論」という用語を便宜上用いる。

3)  このような発想は「マーケティング論の体系的な研究の発端(Kondo, 1967)」とされるShaw(1912)において既に見られる。コスト・リーダーシップに関連した低価格戦略に関してはPorter(1985)の影響が強いが,伝統的にマーケティング論では低価格戦略よりも高価格戦略の意義のほうが重視されてきたと言える。

4)  このような評価はLilien and Yoon(1988)の図表で登場し,その後の複数の研究でも踏襲されている。実際のところ,Mickwitz(1959)では原材料,半製品,投資財,消費財(最寄り品・買回り品・専門品)に関して企業数や生産数量が増えるにしたがって価格及び需要の価格弾力性がどのように変化するかが描写されているものの,製品ライフサイクルの段階ごとの分析は行われていないし,製品ライフサイクルそれ自体への言及もない。

5)  例えば,Parker(1992)Jazayeri and Jazayeri(2011)Wu, Chang, Teng, and Lai(2017)など。一般的な解説はNagle and Müller(2017),pp. 240–261に詳しい。

6)  Kalwani and Yim(1992)前後の,セールス・プロモーションが内的参照価格に与える影響に着目したその他の研究についてはShirai(2005)の第4章にまとめられている。また,価格プロモーションと売上及びブランド選択に与える影響に関する既存研究はOnzo and Moriguchi(1994)に詳しい。

7)  例えばKotler and Armstrong(2016),pp. 337–338。そこでは必ずしも「高/低価格戦略」という用語は見られないが,非弾力的な需要曲線では価格を引き下げるより高水準で維持するほうが得策であると説明されている。また,ミクロ経済学の標準的なテキストでは価格差別戦略に関連して相対的な高低が語られる傾向にある。

8)  例えば,Jobber(1995)の表10.5と10.6の中にも「価格に敏感な/敏感でない消費者」という記述が見られ,これは需要の価格弾力性との関係を容易に連想させる。

9)  例えばユニクロが東レと共同開発し2003年に発売したヒートテックは,同様の機能や効能を持つインナーと比較して低価格であることも「ウリ」の一つであったと言えるが(Asahi, 2003),理論的には,需要の価格弾力性は相対的に低いために,高価格戦略(または値下げをしない戦略)が有効であるとの見方もできる。実際のところ,ユニクロはSPAによる構造的なコスト・リーダーシップと大量生産・大量販売を実現する生産・流通体制の構築によって低価格を実現したのであり,この低価格戦略は需要の価格弾力性の概念では説明できない。ヒートテックはインナー市場の大半を占めるほどのシェアは持っていないと考えられるので,図表2(a)をヒートテックの個別需要曲線,(b)をインナー市場全体の総需要曲線とすると,ユニクロの「低」価格戦略が初めて説明可能となる。なお,図表2では意図的に異なる限界コストが描かれているが,当然ながらコスト構造が同一だとしても同様の逆転現象は生じうる。

10)  例えば花王がヘルシアという製品で茶系飲料市場に参入したケースが当てはまる。このとき,市場を占有していた標準的な製品が350 mlで125円程度であったのに対して,花王は350 mlで180円という「高価格戦略」を採用した(Nikkei, 2003)。

11)  留保価格は,当該製品の品質のみならず,消費者の所得水準や競合製品の価格,さらには当該製品の販売価格(Ps)にも影響を受ける可能性がある。というのも,販売価格はときに品質バロメーターの役割を果たしており(Ueda, 1999),販売価格を知っている消費者と知らない消費者とでは他の条件が一定であるとしても異なる留保価格を持つ可能性が考えられるからである。すると,PrPsは互いに独立した変数ではなくなるが,本稿では,価格変更前の製品の品質及び販売価格を知っている平均的な消費者を想定することで,二つの変数が独立であると便宜上仮定している。また,とりわけ「(競合製品の価格変更を伴う)中期」では,ある消費者の留保価格が変化する可能性が考えられるが,長期においては,当該製品の品質改善またはコスト削減が抜本的に行われブランドへの評価がある程度確立していると考えられるため,競合他社の価格変更は消費者の留保価格に大きな影響を及ぼさないと考えられる。

12)  このような発想は,留保価格と等しい価格を設定することによって消費者余剰の全てを利潤(生産者余剰)に変えようとする(伝統的な)経済学の価格差別戦略の発想とは対照的である。とはいえ,価格差別は極めて限定的な状況下でしか実現しないことに加え,繰り返し購買やブランド・ロイヤルティの形成といった長期的視野に立てば,PrPsの差を広げるという発想は,企業のマーケティング戦略または価格(変更)戦略にとって非常に重要であると考えられる。

13)  この基準点は,第一に自社製品の価格(IIの3における一つめと二つめ),第二に市場価格(三つめと四つめ)に分けることが可能であり,前者の場合,Cは個別企業の平均生産費用,⊿Cは個別限界費用=Psとなり,留保価格(Pr)は個別需要曲線上の点として表される。同様に後者の場合,Cは市場または産業における標準的な平均生産費用,⊿Cは市場における限界費用=市場価格,留保価格は(Pr)は総需要曲線上の点として表される。

14)  通常,こうした無謀な高価格戦略は短期間(本稿で言う「短期」または「中期」)に瓦解するが,その事業が利潤度外視の趣味的なものである場合(例えば,節税や身内への給与支払いなどを目的とした不採算事業,店舗名を次々と変えながら同じ場所で延命する「ボッタクリ店」などの反道徳的事業の場合)には,長期にわたって継続し消費者需要とのズレを更に広げていく可能性も考えられる。同様に,無謀な低価格戦略も,(例えば,マンションの耐震偽装事件や定期的な「閉店セール」のように)情報の非対称性によって消費者が低品質であることを見抜くことができない場合,長期にわたって持続する可能性が考えられる。

15)  直観的に理解しづらいであろうから簡単な数値を用いて説明を補足しよう。例えば,仮に価格変更前において,PrB=150,PsB=100,CB=40であるとき,コスト削減によってそれぞれがPrA=110,PsA=50,CA=20へと変化したとしよう。このとき,製品・サービス1単位当たりの利益は60(=100−40)から30(=50−20)へと減少している一方で,留保価格の減少幅40(=150−110)を市場の価格の減少幅50(=100−50)が上回ることによって消費者余剰(留保価格と市場価格の差)は50(=150−100)から60(=110−50)へと拡大していることが分かる。消費者余剰の拡大は需要の増加を暗に示しており,需要拡大効果によって利益の減少をカバーするという「薄利多売」の現象が生じている。

岩本 明憲(いわもと あきのり)

2008年に慶應義塾大学商学研究科後期博士課程を修了(商学博士)。現在,関西大学商学部教授(流通専修)。主たる研究分野はマーケティング学説史,価格戦略理論,流通経済学。

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