マーケティングジャーナル
Online ISSN : 2188-1669
Print ISSN : 0389-7265
39 巻, 3 号
デジタル社会におけるブランドのあり方
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
巻頭言
  • 澁谷 覚
    2020 年 39 巻 3 号 p. 3-6
    発行日: 2020/01/11
    公開日: 2020/01/11
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    The chief theme of this issue is the terms “Digital” and “brand,” based on our fundamental question of how brands are growing under the current digital environment. Consistent with this theme, we would like to consider two recent upheavals with respect to brands. The first is so-called “Core Marketing,” which advocates focusing on core customers who account for approximately 80 percent of total sales, based on the Pareto principle. This is quite persuasive, if the underpinning assumption is right. However, Sharp (2010) has recently reported that in most industries, these core customers are responsible for only about fifty percent of a brand’s sales. If this is correct, the fundamental logic of fan marketing is compromised. The second upheaval relates to the emergence of many “Digital Native Vertical Brands (DNVB)”, such as WP, Bonobos, Everlane, Glossier, etc. Our question is: from the perspective of the relationship between brands and their customers, what are the key differences between these DNVB and traditional brands? Our contributors to this issue discuss these highly important concerns.

特集論文 / 招待査読論文
  • ― 新しい研究パラダイムに向けて ―
    田中 洋
    2020 年 39 巻 3 号 p. 7-20
    発行日: 2020/01/11
    公開日: 2020/01/11
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    本稿は,ブランドと想像力について,想像力とは何かを問うとともに,ブランドと想像力について新たな研究パラダイムを構築するための消費者行動モデルを提案する理論的論文である。研究レビューから,想像力が重要な概念とされながらも,マーケティング論ではあまり扱われてこなかったこと,諸学での想像力についての考察で共通していることとして,想像力が人間の行為として重要であること,感情・思考・感覚・知覚・記憶などと関連しながら,同時にこれらを統合する力として働いていること,想像力が人間特有の遺伝形質であり,脳神経科学から再帰性という概念を用いることによって想像力の在り方がよりよく理解できることなどを明らかにした。そのうえで新たなブランドの定義を示したうえで,ブランドと想像力についての新たな研究パラダイムを提案して実証研究への道筋を示した。

  • ― ブランド価値協創 ―
    西原 彰宏, 圓丸 哲麻, 鈴木 和宏
    2020 年 39 巻 3 号 p. 21-31
    発行日: 2020/01/11
    公開日: 2020/01/11
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    本研究では,これまでのブランド構築を踏まえて,これから一層進展していくデジタル時代におけるブランド構築について考察し,企業と消費者との価値共創に対して,これまで見過ごされていたブランド構築に寄与する第三の主体であるBIT(Brand Incubation Third-party)を交えたブランド価値協創(collaborative creation of brand value)を提唱する。そして,3主体によるブランド価値協創においては,経済的関係性を超えた社会的関係性を示す概念であるブランド・エンゲージメント(brand engagement)が重要であることを提示する。

  • ― Amazonと楽天の比較から ―
    久保 麻子
    2020 年 39 巻 3 号 p. 32-51
    発行日: 2020/01/11
    公開日: 2020/01/11
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    急速なインターネットの環境改善やスマートフォンの普及により,企業と消費者とのタッチポイントが増えたことで,企業は差別化のために消費者に優れた体験を提供することが求められてきている。消費者に対して製品やサービスを通じて「体験」を提供するという概念は,経営手法に取り入られてきたが,学術的にユーザーエクスペリエンス(UX)の影響を調査した研究はまだ少ない。本研究では,UXとブランドに関する先行研究をレビューした上で,ECサイトにおけるUXのブランド態度に対する影響と,その要素について考察した。そこで,UXの要素を,Peter Morville(2004)が提唱した「UXのハニカム構造」より6つの要素を抽出し,それぞれのブランド態度に対する影響を調査した。結果,実務上UXの設計に利用されている6要素が,学術的にみてもUXを構成する因子となることが確認された。さらに,6要素のうち,4要素がブランド態度に正の影響を及ぼすことも確認されたことは,経営視点において示唆を与えるものである。

  • ― デジタル社会におけるブランド戦略にむけた基盤的検討 ―
    久保田 進彦
    2020 年 39 巻 3 号 p. 52-66
    発行日: 2020/01/11
    公開日: 2020/01/11
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    社会のデジタル化が急速に進展しつつある現在,そこにおけるブランド戦略のあり方について大局的に検討することは,非常に重要な課題である。しかしそのためには,まずデジタル化によって消費環境がどのように変化するかを的確に認識しておく必要がある。こうした考えに基づき,本研究ではデジタル社会における消費環境について検討していく。具体的には,まずいくつかの研究をレビューしながら,デジタル社会における消費環境の動向について確認する。つづいてBardhi and Eckhardt(2017)によって提示された「リキッド消費」について説明する。そしてさらにリキッド化が社会に浸透している様子を,通時的データを用いて観察する。なお本研究における議論はKubota(2020)へと引き継がれたうえで,こうした消費環境の変化に対応したブランド戦略のあり方へと展開されていくことになる。

  • ― リキッド消費に基づく提案 ―
    久保田 進彦
    2020 年 39 巻 3 号 p. 67-79
    発行日: 2020/01/11
    公開日: 2020/01/11
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    デジタル化は現代の消費環境を特徴づける重要な要素の1つである。社会生活や経済活動の各所にデジタル技術が用いられることで,消費環境は大きく変化している。それではデジタル化が進展する中で,企業や組織のブランド戦略はどのような方向を目指すべきであろうか。本研究ではこうした問題意識に基づき,Bardhi and Eckhardt(2017)によって提示された「リキッド消費」を鍵概念としながら,デジタル社会におけるブランド戦略について俯瞰的に検討していく。具体的には,まずKubota(2020)における議論を引き継ぐかたちで,リキッド消費をブランド消費行動の観点から再検討する。そしてここから,文脈への適合と消費の手軽さがもたらす心地よさの重要性を指摘する。つづいて「裾野を広げる戦略」と「生活の中に溶け込む戦略」という,リキッド消費に対応した2つのブランド戦略を提案する。そして最後に,研究全体を振り返るとともに,限界点や今後の課題について議論する。

レビュー論文 / 招待査読論文
  • 遠藤 剛史
    2020 年 39 巻 3 号 p. 80-88
    発行日: 2020/01/11
    公開日: 2020/01/11
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    永年の間,多くの革新的なアイディアによって発展してきた日本料理業界において,日本人の食嗜好も変わっていくなか,その技術を将来に効果的な方法で普及・伝承していくことが必要とされている。また,グローバリゼーションの進展により,海外へ向けて普及させていく方法論も確立が急務である。経営学において,伝統的な日本料理を取り上げた研究は多くはないが,その研究は「食べる」という行為の性格上,多くの学問分野に広く渡っている現状がある。本論では日本料理産業内の職業料理人の組織という視座に基づき,料理の構造化,組織と技術伝承,必須食材の供給という3つの視点から先行研究のレビューを行っていき,日本料理の普及・再現について検討すべき課題の抽出を試みるものである。

投稿査読論文
  • ― 高価格戦略と低価格戦略の識別 ―
    岩本 明憲
    2020 年 39 巻 3 号 p. 89-103
    発行日: 2020/01/11
    公開日: 2020/01/11
    [早期公開] 公開日: 2019/12/25
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    本研究の一義的な目的は,価格戦略理論の一画を成す価格変更に関連して,既存研究の問題点を整理・指摘したうえで,短期の値上げ及び値下げに加えて,その延長線上に実現する長期の高価格戦略及び低価格戦略を全般的な価格変更戦略として包括し,これらの多様な価格引き上げと引き下げを識別・整序する包括的な理論的フレームワークを提示することである。この目的を果たすべく,まずは価格変更に関する既存研究をレビューすることで本研究の射程がこれまでの価格変更研究をベースとしながらも,それを拡張・発展させる内容であることを確認する。次にプロスペクト理論を用いて,短期と中期の価格変更を識別し,長期かつより高次の価格変更戦略として,高価格戦略と低価格戦略を位置づける。それを踏まえて,留保価格と販売価格の差異,そして価格変更のためのコスト及びそれらの変化に着目し,四つの短期・中期の価格変更及び長期的に実現する八つの高/低価格戦略を分類・識別する理論モデルとそれに該当する事例を提示する。

  • ― 企業公式Facebookページの分析 ―
    麻里 久
    2020 年 39 巻 3 号 p. 104-115
    発行日: 2020/01/11
    公開日: 2020/01/11
    [早期公開] 公開日: 2019/12/25
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    ブランドコミュニティ研究にとって,ソーシャルメディアの登場によるコミュニティの変容に対する理解は重要な問題である。ソーシャルメディアをブランドコミュニティとして捉えるべきか,あるいはブランドパブリックとして捉えるべきか,その捉え方はマネジメントの方策に対しても大きな影響を及ぼすものと考えられる。既存研究において,このふたつの概念は特定の状況下で一方のみが形成されるものなのか,あるいは同じ次元で共存可能なものなのか,ふたつの可能性が示唆されてきた。しかし,後者に関する考察はあまり進んでいない。そこで本稿では,既存研究におけるブランドコミュニティとブランドパブリックというふたつの概念をそれぞれ確認しながら,企業が運営するFacebookページにおける消費者行動を観察する。その結果として,企業が運営するFacebookページにおいて,ブランドコミュニティの特性とブランドパブリックの特性がどちらも遍在していることを提示する。

マーケティングケース
  • ― 製品安全への挑戦 ―
    鷲田 祐一
    2020 年 39 巻 3 号 p. 116-124
    発行日: 2020/01/11
    公開日: 2020/01/11
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    家具販売大手であるニトリは,2007年の大規模リコール事件を契機に,製品安全・品質管理を自社の最大のテーマとする方針転換を実施し,製造元企業への積極的な経営・技術指導や,自社の組織風土改革を推進してきている。それらの成果として,家具販売の競合他社を引き離して32期連続の増収増益,世界576店舗までの圧倒的な量的拡大を実現しつつも,経済産業省主催の製品安全対策優良企業表彰において二回連続で経済産業大臣賞(最高賞)を受賞するという快挙を両立した。製造物責任の時代を超えて,企業やその商品・サービスがどのようにして社会と共生していくのか,という視点で見るとき,今までのニトリの一般的イメージとは違う真の姿が見えてきた。

  • ― リコー@Remoteの事例 ―
    河股 久司, 守口 剛
    2020 年 39 巻 3 号 p. 125-136
    発行日: 2020/01/11
    公開日: 2020/01/11
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    近年,データを活用したマーケティング戦略を行う企業は増加の一途をたどっている。顧客の理解のために,顧客の製品利用に関するデータを活用した事例も存在する。本稿では,顧客の製品利用データを活用して効率的な顧客維持活動を行っているリコーに焦点を当てる。リコーは,「@Remote」と呼ばれる複合機の利用に関するデータ収集システムを活用し,効率的な顧客維持活動を行っている。インタビュー調査を通じて,複合機利用データを活用した既存顧客維持活動の成功の背景に,それまで属人的であった営業担当者のノウハウや知識が活かされていることなどが明らかとなった。このことは,データの利活用に際し,データと顧客をつなぐ架け橋となる営業担当者の役割の重要性を示唆している。

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