マーケティングジャーナル
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特集論文 / 招待査読論文
ECサイト/アプリにおけるUXがブランド態度に与える影響
― Amazonと楽天の比較から ―
久保 麻子
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2020 年 39 巻 3 号 p. 32-51

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Abstract

急速なインターネットの環境改善やスマートフォンの普及により,企業と消費者とのタッチポイントが増えたことで,企業は差別化のために消費者に優れた体験を提供することが求められてきている。消費者に対して製品やサービスを通じて「体験」を提供するという概念は,経営手法に取り入られてきたが,学術的にユーザーエクスペリエンス(UX)の影響を調査した研究はまだ少ない。本研究では,UXとブランドに関する先行研究をレビューした上で,ECサイトにおけるUXのブランド態度に対する影響と,その要素について考察した。そこで,UXの要素を,Peter Morville(2004)が提唱した「UXのハニカム構造」より6つの要素を抽出し,それぞれのブランド態度に対する影響を調査した。結果,実務上UXの設計に利用されている6要素が,学術的にみてもUXを構成する因子となることが確認された。さらに,6要素のうち,4要素がブランド態度に正の影響を及ぼすことも確認されたことは,経営視点において示唆を与えるものである。

Translated Abstract

With the rapid improvement of the Internet environment and the spread of smartphones, the number of potential touchpoints between companies and consumers has grown. As a result, companies need to offer consumers a superior experience to differentiate themselves from their competitors. While the notion of providing consumers with “experiences” through products and services is a part of current management techniques, there is still little scientific research on the impact of user experience (UX). This study analyzed the essential elements and impact of e-commerce websites’ UX on brand attitude through a review of prior research concerning UX and brands. Six UX elements were selected from those proposed by Peter Morville’s “User Experience Honeycomb” (2004), and the impact of each on brand attitude was examined. The results confirmed that, even when viewed scientifically, these elements are essential factors in actual UX design. Additionally, four of these six elements have a positive impact on brand attitude, which can provide suggestions from a management perspective.

I. はじめに

1. 研究の背景

特に2000年代に入り,ウェブサービスのみならず,製造業,小売,金融などあらゆる業界において,ユーザーエクスペリエンス(以下UXとする)の向上を経営課題として取り入れる動きが見られる。その背景には,急速なインターネット環境の整備やスマートフォンの普及などにより,顧客側の製品やサービスに対する期待値が高まり,より個人に最適化された顧客体験を提供することが企業に求められていることが挙げられる。

経済価値の進展におけるエクスペリエンスについて考えるとPine and Gilmore(1999)は著書Experience Economy(邦題:経験経済)の中で,経済発展の一つの経過として経験経済という概念を示した。消費価値として,農産物のような「コモディティ(Commodity)」,工業製品のような「製品(Goods)」,接客サービスのような「サービス(Services)」に加え,これまでの経済発展がたどってきた経済価値とは全く異なる消費価値として「経験(Experiences)」を位置づけ,「消費者は単に製品やサービスを消費するのではなく,その消費から得られる経験そのものに価値を見出す」ことを指摘した。通常,製品はコモディティ化に向かって進むが,個々の顧客に合わせてカスタマイズされると一段階上のステージに自動的にシフトする。しかしサービスもいずれコモディティ化するとさらなるカスタマイズが必要になり,サービスの先にある差別化の手法が「経験」であるという。経験経済とは経験価値の経済であり,顧客の感動や個人的な思い出に残るような演出が重要だとしている。

2. 研究の目的と意義

本研究の問題意識はUXがブランド態度にどのように影響をするか,というものである。UXを重要視した経営は関心が高まっており,実務レベルではユーザーインターフェイスやUXのテストは実施されているものの,そのKPI指標はページビュー(閲覧数),ユニークユーザー数,コンバージョン率,売り上げなどに偏りがちであるのが実態である。UXが売り上げなどに比べ,より高次なブランド態度に影響することを明らかにすることで,UXの重要性を示し経営指標に加えることに積極的な意味を持たせることとしたい。

しかしながら,UXの概念は過去10年間の急速なデジタル化の中で発展した新しい概念であることから,定義も曖昧であり複雑な要素が関連する。UXの質を高めるとは具体的にどの要素に注力すれば良いのか,UXの各要素を分解しそれぞれのブランド態度への影響を分析することでUXの注力分野について実務的な示唆を与えたい。したがって,本研究では2点をリサーチクエスチョンとする。①UXはブランド態度に影響を与えるか,②UXのどの要因が特にブランド態度に影響を与えるか,である。これらを解明することで,より効果的なUXの在り方を示し,実務へのインプリケーションを導出したい。

II. UXとブランドに関する先行研究のレビュー

学術的には,これまでUXの前段階となるユーザビリティがロイヤルティに対して与える影響は確認されている(Flavián, Guinalíu, & Gurrea, 2006; Ha & Perks, 2005)。また,UXの中でも,特定のブランドによって生成された経験をブランドエクスペリエンスと呼ぶが,Schmitt(1999a)が「経験マーケティング(Experiential Marketing)」の概念を提案して以来,マーケティングの分野においてブランドエクスペリエンスの構成要素及びブランドロイヤルティへの影響が研究されてきた。ブランドエクスペリエンスとは「ブランド関連刺激により想起される主観的で内的な顧客の反応(感覚的反応,感情的反応,認知的反応,行動的反応)」(Brakus, Schmitt, & Zarantonello, 2009)と定義されており,ブランドエクスペリエンスが単独でブランドロイヤルティ,ブランドパーソナリティ,ブランド態度,顧客満足に対して正の影響を与えることが確認されている(Iglesias, Singh, & Batista-Foguet, 2011)。

その後,研究対象はウェブサイト,モバイルアプリ,さらにはオンラインショッピングにおける購買意向への影響へと広がりを見せている。本章ではそれぞれをレビューし,本研究における仮説モデルと調査内容の設計に繋げる。

1. ユーザビリティとブランドに関する先行研究

まず,Palmer(2002)は,ウェブサイトにおける成功要因を定義している。本研究では,ウェブサイトの評価項目として,ダウンロードの遅延(Download Delay:アクセスのスピード,ウェブサイト内のディスプレイ表示率),ナビゲーション(Navigation:ウェブ構成,レイアウト,配列),コンテンツ(Contents:製品情報の量と種類),双方向性(Interactivity:カスタマイゼーションとインタラクティビティ),反応性(Responsiveness:問い合わせ窓口,FAQなど)の5点を挙げ,これらの顧客満足,再訪可能性,利用頻度へのそれぞれ影響を及ぼすことを確認した。

時期を同じくして,Agarwal and Venkatesh(2002)により,Microsoft社が開発したMicrosoft Usability Guidelines(MUG)にHuman Computer Interaction(HCI:人間とコンピューターとの相互作用)の観点を導入し,ウェブサイトのユーザビリティをヒューリスティック(経験則)的に評価する試みがなされた。調査対象は,航空会社,オンライン書店,自動車メーカー,レンタカー会社の4分野の21サイトとした。そこで,ウェブサイトのユーザビリティは,①コンテンツ(Contents:関連性,使用メディア,情報の深さと広さ,最新情報か),②使いやすさ(Ease of Use:目的,構造,フィードバック),③プロモーション(Promotion:広告),④カスタマイズ(Made-for-the-Medium:コミュニティ,パーソナライズ,改良),⑤感情(Emotion:チャレンジ,ストーリーライン,キャラクターの強さ,ペース制御)の5点で評価できることを確認した。

このAgarwal and Venkatesh(2002)の指標を用い,デスクトップ(PC)とモバイルのウェブサイトにおいて,ユーザビリティの評価に影響を与える要素は異なるかどうか,に着目したのが,Venkatesh and Ramesh(2006)である。調査対象は,銀行,ニュース,ショッピング,旅行のそれぞれPCとモバイルのウェブサイトを比較し,結果として,前述の5要素のうち,モバイルでは②使いやすさと④カスタマイズが重要視される傾向にあり,ウェブでは③プロモーションと⑤感情が強い影響を持つことが確認された。

その後,ウェブにおけるブランドエクスペリエンスのブランド評価への影響の調査へと繋げられ,Ha and Perks(2005)は,オンライン書店,ポータルサイト,CDストア,旅行サイトを対象に,ブランドエクスペリエンスのブランド親和性(Brand Familiarity),満足度(Satisfaction),およびブランド信頼(Brand Trust)への影響を調査した。その中で,ブランド信頼は,①多岐にわたるブランドエクスペリエンスと情報検索性,②高レベルのブランド親和性,③認知的且つ感情的要素にもとづく顧客満足度の3点に影響を受けることが確認された。

また,Flavián, Guinalíu, and Gurrea(2006)は,ウェブサイトにおける,ユーザビリティと満足度,信頼性,ロイヤルティとの関係について調査し,ウェブサイトに対する信頼は,ユーザーがそのシステムが使いやすい(Usable)であると感じたときに向上し,その結果として,ウェブサイトに対するロイヤルティも向上することを確認した。同じく,良いユーザビリティは,ユーザーの満足度に正の影響を及ぼし,ウェブサイトへのロイヤルティも同時に向上させることが確認された。また,信頼性はウェブサイトの満足度の度合いに部分的に影響を受けるとしている。

Technology Acceptance Model(TAM:技術受容モデル,Davis, Bagozzi, & Warshaw, 1989)を応用し,ブログのユーザビリティについて研究も行われている(Lee, Moon, & Kim, 2007)。Lee et al.(2007)は,Moon and Kim(2001)が発表した,オリジナルのTAM(Davis et al., 1989)に,知覚された娯楽性(Perceived Playfulness)を,使用態度(Attitude toward Using)に対する説明変数として追加した,拡張TAMを適用した。その上で,知覚された使用容易性(Perceived Ease of Use)に対する説明変数として,簡素さ(Simplicity)と知覚された操作性(Perceived Control)を設定。簡素さと操作性がそれぞれ,直接的に使用容易性に影響を与え,また,容易性が娯楽性と有用性に影響することを確認した。

近年では,研究対象をモバイルアプリとする調査もみられ,Baek and Yoo(2018)は,モバイルアプリにおけるユーザビリティとブランドロイヤルティに関する研究を行なっている。アプリのユーザビリティの因子として,使いやすさ(User-Friendliness),個人化(Personalization),速さ(Speed),楽しさ(Fun),遍在性(Omnipresence)の5つの因子を特定した上で,アプリのユーザビリティが継続利用意向と推奨意向へ直接的な影響を与え,ブランドロイヤルティへも間接的な影響を及ぼすことを確認した。

同じく,モバイルアプリにおける,楽しさ(Enjoyment)と可動性(Mobility)の重要性に着目したのは,Lu, Liu, and Wei(2017)である。この研究では,アプリの楽しさと可動性が満足度(Satisfaction)と利用継続意向への主要なドライバーとなることとが確認された。さらに,楽しさと可動性と満足度の3変数が,アプリ利用後の態度の変数を60%以上説明することができるとしている。

2. オンラインショッピングのユーザビリティに関する先行研究

研究対象をオンラインショッピングに限定し,ユーザビリティが顧客満足やロイヤルティに対して与える影響についての調査は2000年代以降,各国でなされており,昨今ではモバイルに特化した購買行動にまで派生してきている。本節では時系列にレビューする。

Park and Kim(2003)は,韓国のオンライン書店を対象に,そのサービスの質を決定づける要素を,①ユーザーインターフェイスの質(User Interface Quality),②商品情報の質(Product Information Quality),③サービス情報の質(Service Information Quality),④セキュリティ知覚(Security Perception),⑤Site Awareness(サイトの認知度)の5点とし,それぞれの情報の満足度(Information Satisfaction)と,相関的な便宜(Relational Benefit:顧客がサービスとの長期的な関係によって得ることができる便宜)に対する正の影響を確認した。さらに,情報の満足度と相関的な便宜がサイトに対するコミットメント(Site Commitment)に直接的に,購買態度(Purchase Behavior)に間接的に影響を与えることが確認された。

同じく,台湾のオンライン書店を対象に,オンラインサービスの質が全体的なサービスの質,顧客満足,さらに購買意向にどのように影響するかを調査したのが,Lee and Lin(2005)である。Lee and Lin(2005)は,オンラインショッピングの質を構成する要素として,①ウェブサイトのデザイン(Website Design),②確実性(Reliability),③応答性(Responsiveness),④信頼性(Trust),⑤個人化(Personalization)の5要素を設定し,個人化を除く4要素は,全体的なサービスの質(Overall Service Quality)と顧客満足(Customer Satisfaction)に直接的な影響を与え,購買意向(Purchase Intentions)に間接的に影響することを確認した。その上で,オンラインサービス提供者は,サービス向上のために,上記①から④を向上させる戦略を立てるべきであるとしている。

オンラインショッピングサービス提供者にとって,顧客の継続利用(Retention)を高めるための示唆を与えているのが,Khalifa and Liu(2007)である。Khalifa and Liu(2007)は,オンラインの再購入意向(Online Repurchase Intention)に影響する要素として,知覚された有用性(Perceived Usefulness)とオンラインショッピングの満足度(Online Shopping Satisfaction)を規定した上で,オンラインショッピングの習慣(Online Shopping Habit)と,オンラインショッピングの経験(Online Shopping Experience)が,満足度を介して,同等に再購入意向に間接的に影響することを確認した。また,オンラインショッピングにおける有用性のドライバーとして,アフターサービス,取引の効率性,セキュリティ,便利さ,節約の5点を挙げている。

Oliver(1980)によって提唱された,期待不一致モデル(Expectancy Disconfirmation Theory: EDT)が,オンラインサービスの質におけるロイヤルティへの影響を測定する際に適用できないかと,オンラインオークションを調査対象に実証したのが,Yen and Lu(2008)である。Yen and Lu(2008)は,オンラインサービスの質を決定づける,効率性(Efficiency),プライバシー保護(Privacy Protection),連絡手段(Contact),業務遂行(Fulfillment),応答性(Responsiveness)が,ユーザーの期待不一致(Disconfirmation)に影響を与えることを確認した。期待不一致とは,受けたサービスが期待以上であったと認識することである。また,オンラインオークションの買い手の期待不一致は,満足度に影響し,満足度はロイヤルティに影響することが確認された。よって,オークション出品者は,落札の効率性と買い手のプライバシー保護に注力すべきであり,売り手と積極的に連絡を取り,的確に商品を届け,問題があった場合は適切に対処すべきであるとしている。

モバイル上のオンライン購買行動における文脈に転じると,Lin and Wang(2006)が,モバイルのサービスが顧客ロイヤルティと顧客満足に与える影響について調査している。Lin and Wang(2006)は,モバイルオンラインショッピングサービスにおいて,知覚された価値(Perceived Value)と信頼性(Trust)が,顧客満足に直接的に影響し,顧客ロイヤルティに間接的に影響することを確認した。また,顧客ロイヤルティには,利用頻度などによる習慣(Habit)も影響するとしている。よって,これまでのオンラインショッピングにおけるモデルは,モバイルショッピングにおいても適用可能であることが証明されたが,加えて,モバイル行動においては使い慣れているサービスを利用する傾向が強いため,再利用率を高める施策も重要であることが分かる。

同じく,TAM(技術受容モデル)を応用し,モバイルショッピングでの購買意向について調査したのが,Lu and Su(2009)である。Lu and Su(2009)は,TAMの容易性が影響する要素として楽しさ(Enjoyment)を加え,外的要因として,モバイル機器を使いこなせているかどうかを測る熟練度(Mobile Skillfulness)に置き換えた。また,モバイル機器の使用熟練度によっては利用者に不安感(Anxiety)を与え,モバイル購買意向に負の影響を与えるとしている。また,モバイル購買意向に影響するモバイル特有の要素として,適合性(Compatibility)を付け加えている点が特徴である。モバイルコミュニケーションの文脈においては,仕事,学校,趣味など,ソーシャルの関係構築に利用することが多いため,特にゲームなどにおいて繋がりを促すようなソーシャルの機能を追加することは,利用意向に正の影響を与えるとしている。PCでのオンライン購買行動と異なり,楽しさや社会性などモバイル特有の影響要素を考慮することがアプリ設計において重要であると示唆している。

オンラインショピングの過去の利用経験(Online Shopping Experience)を,顧客満足と再購入意向に対する調整変数として,その役割を検証したのが,Pappas, Pateli, Giannakos and Chrissikopoulos(2014)である。Pappas et al.(2014)は,満足度に対する説明変数として,①ユーザーがどれぐらい買い物に際し苦労をするかを事前に想定する期待値(Effort Expectancy),②サービス全体のパフォーマンスに対する期待値(Performance Expectancy),③買い物を成功させることができるという自己効力感(Self-Efficacy),④信頼(Trust)の4点を挙げた。そこで,過去に高い満足度のある経験をしたユーザーは,パフォーマンスに対して高い期待値を持ち,再購入意向も高まることが確認された。

最後に,オンライン購買者において買い物の動機(Motivation)別に類型が存在するのではないかという研究を試みたのが,Rohm and Swaminathan(2004)である。Rohm and Swaminathan(2004)は,購買の傾向として,①便利さを動機とするConvenience Shopper,②種類豊富なことを求めるVariety Seeker,③便利さと豊富な種類のバランスを求めるBalanced Buyer,④実店舗での経験を求めるStore-Oriented Shopperの4クラスタの存在を確認しており,マーケターは提供するサービスや製品に応じて,注力する機能を強化するべきであると示唆している。

III. UXにおける実務での取り組み

ここでは,実務上でもUXの設計および測定に用いられている4つの概念を紹介する。

まず,Morville(2004)が発表した「UXのハニカム構造(User Experience Honeycomb)」(図1)では,UXの要素を「価値があるか(Valuable)」を中心に「①好ましいか(Desirable),②探しやすいか(Findable),③役に立つか(Useful),④アクセスしやすいか(Accessible),⑤信用できるか(Credible),⑥使いやすいか(Usable)」の6つの要素を配置している。つまり,周りの6つの要素が成立してはじめてユーザーにとって価値あるUXが提供できるという考え方である。

図1

UXのハニカム構造

(出所)User Experience Design, Semantic Studios, June 21, 2004, Peter Morvilleより筆者作成

http://semanticstudios.com/user_experience_design/

(以下Morville, 2004による解説:括弧内筆者訳)

①Desirable:好ましいか

「我々の効率性への探求は感情的デザインのイメージ,独自性,ブランド,その他要素に対する力と価値への敬意によって鍛えられなければならない」

②Findable:探しやすいか

「我々は見やすいウェブサイトと,わかりやすいコンテンツの配置デザインをすることを努力しなければならない。それによってユーザーは彼らが必要なものを見つけることができる」

③Useful:役に立つか

「実務家として我々はマネージャーの描いた通りに線を描いていたら満足することはできない。我々は製品とシステムが便利であるかを問い,我々の技能と表現の知識をさらに使いやすく革新的なソリューションに適用させる勇敢さとクリエイティビティを持つべきである」

④Accessible:アクセスしやすいか

「建物にエレベーターとライトがあるように,我々のウェブサイトは障害者(人口の10%以上)にもアクセスしやすくなくてはならない。今日,それは倫理的なことであるが,将来的には法律になるであろう」

⑤Credible:信頼できるか

「ウェブの信頼性プロジェクトのおかげでユーザーは我々が伝えるメッセージを信じるかどうかに影響するデザインの要素を理解できるようになり始めた」

⑥Usable:使いやすいか

「簡単に使えることは必須でありつづけるが,インターフェイス中心の手法やヒューマンコンピューターインタラクション(HCI)はウェブデザインのすべての面には対処していない。つまり,ユーザビリティとは必要条件ではあるが十分条件ではない」

本研究では上記6つの要素をUXを構成する要素と仮定し,調査票を作成し,各因子のブランド態度への影響を検討するものとする。

また,実務上特にウェブ構築時において考慮されているモデルとしては,Garrett(2003)が提唱した,「UXの5階層モデル(The Five Planes)」(図2)がある。Garrett(2003)はウェブ構築時に考慮すべきことは,ユーザーにとってのエクスペリエンスであるとしている。そしてUXの構成要素を,表面(Surface),骨格(Skelton),構造(Structure),要件(Scope),戦略(Strategy)の5段階の階層とした。

図2

UXの5階層モデル

(出所)The Elements of User Experienceより筆者作成 訳は『ウェブ戦略としての「UX」』より参照

実務上ウェブ構築において,経営者,管理者,開発者,デザイナー,外注業者など,関与する担当者が増え意思疎通が難しくなることで,本来のサイトの目的が達成されず,結果,質の高いUXを提供することができなくなってしまうことは珍しくない。それを避けるために,全階層で関わる人間の意思疎通を円滑にし,例えば表面のデザインを担当するデザイナーであっても下層の戦略から関わり,サイトの目的を理解することが重要であるとして,実務でも活用されている。

そもそもUXのデザインにおいて,人間中心デザイン(Human-Centered Design, HCD)の考え方を提唱したNorman(1988)は,著書The Psychology of Everyday Things(のちにThe Design of Everyday Thingsと改題され出版。邦題『誰のためのデザイン?』)の中で,人間の認知的側面に注目し,「行為の7段階理論サイクル(The Seven Stage of Action)」を提唱している(図3)。

図3

行為の7段階サイクル

(出所)The Psychology of Everyday Thingsより筆者作成 訳は『誰のためのデザイン?』より参照

つまり,人間は製品やサービスに出会うと,それをどうやって使うのかという「実行の橋」と,使ってみてそれは自分が望んでいたことであったかという「評価の橋」を行き来する。開発者は新しい製品やサービスを開発する際,人間中心デザインの概念にもとづき,ユーザーが求めていることの本質を見抜く観察スキルを身につけることがポイントであると提唱している。

最後に,UXが対象とする期間と影響を与える要素については,2011年に欧州の研究者・実務家によって発表されたUser Experience White Paper:UX(UX)白書,Roto, Law, Vermeeren and Hoonhout(2011)の中で提唱されている。UX白書では,UXの対象とする期間は,①使用前の予期的(Anticipated)UX,②使用中の一時的(Momentary)UX,③利用後のエピソード的(Episodic)UX,④利用時間全体の累積的(Cumulative)UXの4分類としている。

また,UXに影響する要素として,①文脈(Context),②ユーザー(User),③システム(System)の3つの主なカテゴリーに分類できるとした。文脈とは他人と同時に使うというような社会的分脈,机の上で使うのかバスの中で使うのかといった物理的な分脈,システムに取り込まれており他にも注意を払うべきタスク分脈,さらにネットワークや他の製品との連携など技術的・情報的分脈があるという。ユーザーについては,ある製品を使おうとするモチベーション,雰囲気,心理的・身体的状態,期待値などに影響される。また,システムについては,対象システムにデザインされた機能性や審美性などの特性,ユーザーが追加・変更した特性,ブランドや製造業者のイメージ,などがUXに影響を与えるとしている。つまり,UXにおいては,製品・サービス自体の設計のみならず,使用の前後,および取り巻く環境についても考慮すべきであることが言える。

IV. 調査概要と結果

1. 調査概要

(1) 仮説モデル

本研究では,前述のMorville(2004)が提唱する「UXのハニカム構造」における下記6つの要素をUXを構成する因子と仮定し,調査票を作成し各因子のブランド態度への影響を考察した。また,調査票作成には米国における二大ECプラットフォームである,eBayとAmazonにおいて,そのサービスの質が,知覚されたオンラインショッピングの価値(Perceived online transaction value)と満足度(Satisfaction)へ影響することを確認した先行研究(Xiao, 2016)を本研究のモデル研究とし質問票を翻訳し,適用している。

①Desirable:好ましいか

②Findable:探しやすいか

③Useful:役に立つか

④Accessible:アクセスしやすいか

⑤Credible:信頼できるか

⑥Usable:使いやすいか

被説明変数となるブランド態度についてはChaudhuri and Holbrook(2001)によるブランド評価に関する研究にて使用された質問項目を,早稲田大学大学院経営管理研究科川上智子教授が双方向翻訳をした「ブランド関連の概念と尺度」より以下4要素を設定した。

①Brand Trust:ブランド信頼

②Brand Knowledge:ブランド知識

③Brand Commitment:ブランドコミットメント

④Brand Loyalty:ブランドロイヤルティ

よって,以下仮説を設定した。

H1:Desirable(好ましいか)はブランド態度に正の影響を与える

H2:Findable(探しやすいか)はブランド態度に正の影響を与える

H3:Useful(役に立つか)はブランド態度に正の影響を与える

H4:Accessible(アクセスしやすいか)はブランド態度に正の影響を与える

H5:Credible(信頼できるか)はブランド態度に正の影響を与える

H6:Usable(使いやすいか)はブランド態度に正の影響を与える

以上の仮説をモデル化すると図4の通りとなる。なお,因果関係は全て正の関係である。

図4

仮説モデル

(出所)筆者作成

(2) 定性調査からの示唆

仮説モデルを検証するための対象プラットフォームとしてはECサイトおよびアプリを設定し,日本における二大総合ECサイトであるAmazonと楽天市場を選択した。

そこで,調査票を作成するにあたり,当時在籍していた学内および社内において約10名のAmazonおよび楽天ユーザーに対し,定性調査を実施した。質問項目は以下の通りである。

【定性調査概要】

実施時期:2018年10月

対象:20代から50代男女,Amazonまたは楽天市場ユーザー

質問項目:

● Amazonと楽天市場,どちらを主に使うか

● その理由は何か

● 主に何を購入するか

● どれくらいの頻度で利用するか

● Amazon,楽天市場,それぞれのクレジットカードを所有しているか

● Amazonと楽天市場を併用している場合,どのように使い分けをしているか

● どのように商品の検索をするか

● 商品レビューは確認するか

● Amazon,楽天市場,それぞれに改善ポイントがあるとすれば何か

● コールセンターを利用したことはあるか

その中で,Amazonでは特に配達の早さに強くメリットを感じているユーザーが多いことが伺えたため,質問票において配達に関する質問を⑥Usable(使いやすいか)の項目に付け加えた。また,商品レビューの信用度もブランドに対する信用度に影響すると想定されたため,レビューについての項目も⑤Credible(信用できるか)に付け加えた。

(3) 調査票設計,調査

先行研究のレビューおよび定性調査から設定したUXとブランド態度に関する質問項目は表1の通りである。英語がN/Aの項目は筆者が日本語を追加した。楽天市場に関しては「Amazon」を楽天に置換している。なお,被験者には日本語のみを表示している。

表1

UXとブランド態度に関する質問票

(出所)筆者作成

調査はウェブによる質問票調査を株式会社マクロミルの調査専用パネルに対して実施した。実施期間は2018年12月7日(金)から8日(土)である。スクリーニング項目として,Amazon,楽天市場,Yahoo!ショッピング,LOHACO(ロハコ),ZOZOTOWN(ゾゾタウン),BELLEMAISON(ベルメゾン),BUYMA.com(バイマ),メルカリのうち,購入したことがあるECサービスと,主に購入するサービスを回答してもらった。調査対象は20歳から69歳の男女とし,Amazonのロイヤルユーザー(楽天市場も利用経験あり),楽天市場のロイヤルユーザー(Amazonも利用経験あり)をそれぞれ,Amazonについての回答者,楽天市場についての回答者を均等割り付けし,420の有効回答数を得た。質問票の構成は,Amazonと楽天市場それぞれのUXとブランド態度についての質問をランダムに掲出し,リッカート7点尺度で測定した。

【調査概要】

実施期間:2018年12月7日(金)から8日(土)

実施期間:株式会社マクロミル

調査方法:インターネットリサーチ

調査対象:マクロミルのモニタ会員

対象年齢:20歳から69歳

スクリーニング条件:

● Amazon,楽天市場で一度でも購入をしたことがあるユーザー

● Amazon,楽天市場,Yahoo!ショッピング,LOHACO(ロハコ),ZOZOTOWN(ゾゾタウン),BELLEMAISON(ベルメゾン),BUYMA.com(バイマ),メルカリのうち,Amazonまたは楽天市場で最も購入をするユーザー

データ回収後の分析はIBM社のSPSS Statistics 25とAMOS25を用い,確認的因子分析と重回帰分析を行なった。

2. 分析結果

まず,UXの各尺度の信頼性を確認するため,確認的因子分析を行った。モデルの採択はToyoda(2007)を参考に適合度指標により判断する。具体的にはGFIは0.9以上,CFIは0.95以上,RMSEAは0.05以下を基準とした。図5のモデルの検証に入る前にSPSSで因子分析を行い,調査票の中で数値の低い,またはマイナスに作用している項目(表1より,①-4,②-3&4,③-1&8,④-1,⑤-4,⑥-4:いずれもリバース項目)を除外し,さらに各因子得点を求め,モデルの適合度を確認したものが表2である。GFIは,0.975,CFIは0.998,RMSEAは0.077でありいずれも基準を満たすことから,UXを構成する因子はMorville(2004)が考案した前述の「UXのハニカム構造」における6要素を適用し,筆者が定性調査を踏まえて追加した項目を勘案してもモデルとして成立すると考えることとする。

図5

UX測定モデル

(出所)筆者作成

表2

適合度指数

(出所)筆者作成

次に,図4のフルモデルでの共分散構造分析を試みたが,適合度が基準を満たさなかったため,ブランド態度を構成するブランド信頼,ブランド知識,ブランドコミットメント,ブランドロイヤルティ,それぞれの因子得点を求め,さらにブランド態度の合成変数を求め,モデルを図6として修正の上,重回帰分析を行なった。Amazon及び楽天市場の回答者,全420有効回答数の分析結果が図6である。

図6

修正されたモデル(全回答者)

(出所)筆者作成

その結果,役に立つかとアクセスしやすいか以外の4項目のブランド態度への有意な正の影響が確認することができた。よって,前述の仮説H1からH6のうち,H3とH4以外は支持された。

H1:Desirable(好ましいか)はブランド態度に正の影響を与える(支持)

H2:Findable(探しやすいか)はブランド態度に正の影響を与える(支持)

H3:Useful(役に立つか)はブランド態度に正の影響を与える(不支持)

H4:Accessible(アクセスしやすいか)はブランド態度に正の影響を与える(不支持)

H5:Credible(信頼できるか)はブランド態度に正の影響を与える(支持)

H6:Usable(使いやすいか)はブランド態度に正の影響を与える(支持)

さらに,以下6パターン別にブランド態度への影響度合いを同じく重回帰分析により確認した。

①Amazonについての全回答者(③+④:図7

図7

Amazonについての全回答者

(出所)筆者作成

②楽天市場についての全回答者(⑤+⑥:図8

図8

楽天市場についての全回答者

(出所)筆者作成

③AmazonのロイヤルユーザーでAmazonについての回答者(図9

図9

AmazonのロイヤルユーザーでAmazonについての回答者

(出所)筆者作成

④楽天市場のロイヤルユーザーでAmazonについての回答者(図10

図10

楽天市場のロイヤルユーザーでAmazonについての回答者

(出所)筆者作成

⑤楽天市場のロイヤルユーザーで楽天市場についての回答者(図11

図11

楽天市場のロイヤルユーザーで楽天市場についての回答者

(出所)筆者作成

⑥Amazonのロイヤルユーザーで楽天市場についての回答者(図12

図12

Amazonのロイヤルユーザーで楽天市場についての回答者

(出所)筆者作成

まず,Amazonについての回答者(図7)と楽天市場についての回答者(図8)を比較すると,有意傾向は似ているが,Amazonにおいてはより好ましさ,つまり全体的な満足度が強くブランド態度に影響していることが確認された。このことは,満足度がブランド評価に影響することを確認している先行研究や,定性調査でも総じてAmazonユーザーはサービス全体に対する満足度が高くブランド評価も高かったことを裏付ける結果となった。また,楽天市場においてはより信頼性と使いやすさが強くブランド態度に影響している。これは,定性調査でも楽天市場のユーザーは特に詳細なレビューを重視する傾向にあったこととも合致する。Lee and Lin(2005)や,Lin and Wang(2006)が,満足度に与えるオンラインショッピングのサービスの質として信頼性を挙げていることからも,ECサービスにおいて信頼性がUXを構成する要素の中でも重要であることが確認された。使いやすさについては,Flavián et al.(2006)がウェブサイトにおいて使いやすさがロイヤルティを向上させるとした先行研究を裏付けている。

さらに,ロイヤルユーザーか否かで比較をすると,Amazonにおいてはロイヤルユーザーに対して(図9)は,ブランド態度向上のため,自社の強みでもある好ましさ,使いやすさをさらに強化しながらも,ライトユーザーに対して(図10)は,信頼性を強化する施策が求められると考える。一方で楽天市場においては,ロイヤルユーザーに対して(図11)は信頼性と使いやすさを強化しつつ,ライトユーザー(図12)に対しては好ましさを強化することで,よりブランド態度をより向上させることができると考える。

V. 結論

1. 判明事項

本研究ではまず,実務で活用されているMorville(2004)の「UXのハニカム構造」の6要素が学術的にもUXを構成する因子として成立することが確認できた。6要素とは,①好ましいか(Desirable),②探しやすいか(Findable),③役に立つか(Useful),④アクセスしやすいか(Accessible),⑤信用できるか(Credible),⑥使いやすいか(Usable)のことであり,またECサービスにおいて,ユーザーがそれぞれの要素を判断する項目も,インタビュー調査と先行研究のレビューより,具体的に規定することができた。このことは,これまでユーザビリティにおけるロイヤルティへの影響や,ブランドエクスペリエンスのブランドロイヤルティ,ブランドパーソナリティー,ブランド態度,顧客満足に対する影響を調査した先行研究と比較しても,新しい視点を与える結果となった。

さらに,この6要素のうち,③役に立つか(Useful),④アクセスしやすいか(Accessible)を除く4項目においてブランド態度への有意な正の影響を確認することができた。①好ましいか(Desirable)とは全体的な満足度のことであるが,先行研究でも満足度のブランド評価への影響は確認がされており,ECサービスにおいても最も重要な要素のひとつであることが確認された。⑤信用できるか(Credible)とはプライバシーが守られているか,取引のセキュリティは万全か,商品レビューは信用できるものか,などで判断される。インタビュー調査においても,出店者の信頼性は購入に際し判断材料となるという意見や,商品レビューは参照するという意見も見られた。ECサービス提供者側も,売り手と買い手の相互評価や,ユーザーレビューを取り入れ,サイト全体の信頼性を高める施策を行なっていることも,ブランド構築には有効な施策であることが確認できた。⑥使いやすいか(Usable)とは,注文した商品が早く確実に届くか,配達状況を確認できるか,不具合があった際に問い合わせができるか,などである。この点は,ユーザーが求める要件によってサービスを使い分けているという,インタビュー調査からの示唆とも一致する。また,EC各社ではより早く確実な配送を提供するため,物流システムに多額の投資を続けているが,この経営方針の根拠としても理由づけができた。②探しやすいか(Findable)の影響が限定的であった点は,先行研究からも明らかになっている通り,オンラインショッピングにおいては,楽しさ・娯楽性という要素が満足度に影響するため,単に商品を検索しやすく,見やすいサイトを構築するだけでなく,実際に市場を散策しているような高揚感を演出し,商品を探すこと自体を楽しめる仕掛け・サイトデザインの構築も必要になることが伺えた。

2. インプリケーション

本研究の学術的貢献としては,まず,日本におけるUXの議論に一定の示唆を与えることができたと考える。2019年1月現在,Google Scholarにて“User Experience”で検索すると約250万件,“UX”で約31万件,“User Experience Brand”でも約100万件それぞれヒットするのに比べ,「UX」ではわずか742件しかヒットせず,「UXブランド」にいたっては,77件のみであった。つまり,2000年代から実務上,先行して発生してきたUXの概念であるが,特に日本では学術上これまでほとんど議論されてこなかった。

その中で,リサーチクエスチョンとして設定した,①UXはブランド態度に影響を与えるか,②UXのどの要因が特にブランド態度に影響を与えるか,の2点についてUXの構成要素とそのブランド態度への影響を確認できたことは,一定の示唆を与えるものと考える。

実務的なインプリケーションとしては,企業経営においてブランド構築のために,より良いUXを設計する必要があるということである。実務上,売り上げや再訪率,顧客あたり単価など,短期的目標が評価指標になりがちであるが,長期的なブランド態度への影響を考慮すると,より良いUXを顧客に提供するには,顧客目線に立ち,使いやすく信頼性の高いサービスを提供することが求められる。具体的にはユーザーがサービスに対して何を求めているのか,またどのような状況で使っているのかを知るためにユーザー調査を実施し,利用状況を把握した上で,ユーザーの要求事項を明確化する。さらに,ユーザーの要求事項を満足させる設計による解決策を作成し,要求事項に対する設計の評価を行う。つまり,Norman(1988)が提唱しているように,人間中心デザインの概念が今後益々重要になるであろう。また,Schmitt(1999a, 1999b)が指摘しているように経験価値マーケティングを実践するには,戦略だけではなく組織改革も求められると考える。企業内の部門間で異なった経営指標を設定することで,結果としてサービスの質を下げ,顧客満足低下となることを避けるため,全体のUX設計を統括するCXOを置くことも検討すべきである。

3. 本研究の限界と今後の課題

本研究の限界としては,まずRohm and Swaminathan(2004)のような,ユーザーのクラスタ別の考察がない点である。購買行動の特徴によっては重視するUXの要素が異なる可能性があるだろう。次に,Agarwal and Venkatesh(2002)が指摘している通り,PCとモバイルでは影響を与えるユーザビリティの要素が異なるとされているが,本研究ではPCサイトとモバイルアプリのユーザーを同時に調査している点である。サービスを提供する媒体ごとに適切な体験を提供することは実務上でも不可欠である。最後に,UX白書(2011)でも報告されている,時間的概念を含んでいないことである。今回の調査では既に利用している,または,利用したことがあるユーザーを対象としたが,潜在的ユーザーや,利用頻度の高いロイヤルユーザー,またしばらく利用していないユーザーの再利用を促す施策など,サービスとの時間的関わりの度合いに応じてマーケティング戦略を構築することが求められるであろう。本研究で得られた示唆を活かし,より顧客にカスタマイズしたUXを提供するべく実務に取り組んでいきたい。

久保 麻子(くぼ あさこ)

静岡県立大学卒業後,ニューヨークタイムズグローバル,Twitter Japan株式会社,LinkedIn香港にて広告営業に従事。2016年よりアドビシステムズ株式会社デジタルメディア事業本部にてエンタープライズ営業を担当。2019年早稲田大学大学院経営管理研究科修士課程修了。

References
 
© 2020 日本マーケティング学会
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