本研究の目的は,決済手段に対する消費者の心理的所有感が,決済手段の選択,支払意思額(willingness to pay: WTP),受取意思額(willingness to accept: WTA)に及ぼす影響について明らかにすることである。本研究では,2種類の決済手段(現金とスマートフォン決済)を対象として,2つの実験を行った。実験1では,参加者に架空の購買シナリオを読んでもらい,相対的に心理的所有感が低い決済手段が支払い時に選択されやすく,選択された決済手段による支払いの方がWTPは高くなることを明らかにした。実験2では,参加者に4種類の架空の売買シナリオのいずれか2つを読んでもらい,相対的に心理的所有感が高い決済手段が受け取り時には選択されやすく,選択された決済手段による受取の方がWTAは低くなることを明らかにした。