2026 年 46 巻 3 号 p. 277-287
異文化の顧客に対するサービス提供者の文化的適応,すなわち文化横断的サービスの提供は,その顧客にとっては好ましいだろうが,同一サービス環境には国内旅行客もまた存在している。しかし,文化横断的サービスが国内旅行客の満足度へ正負の影響を及ぼしうると指摘した研究は存在しない。そこで本研究は,インバウンド客に対する高水準の異文化適応が,国内旅行客へのサービス水準を低下させる点,および,国内旅行客の不衡平感を生じさせる点に着目し,文化横断的サービスが有する正負の影響を仮説化した。構造方程式モデリングの結果,文化横断的サービスは,1)インバウンド客に比べて通常サービスの相対水準が低下するという不均衡を感じさせ,国内旅行客の満足度を低める一方,2)サービス提供者の有能さを感じさせ,国内旅行客の満足度を高めるが,3)通常サービスの絶対水準の低下には結びつかないということが示された。加えて,ブートストラップ法による間接効果の検定の結果,4)通常サービスの絶対水準の低下が知覚されると,満足度の低下の度合いが大きいということが示された。