抄録
変異理論では,分析に用いられる主たる多変量解析手法をめぐって,Johnson(2009)を契機とした科学革命が発生した.30 年近くにわたって続いたVARBRULプログラムによるロジスティックモデルに基づく分析が,一般化線形混合モデル(GLMM)に基づく分析に置き換えられたのであった.本論文ではその歴史的・理論的背景を解説するとともに,GLMMによる分析例としてMatsuda(1993)の東京語可能形のデータを再分析した.話者と動詞語幹という2 つのランダム効果を取り入れた再分析では,言語内的要因はほぼそのまま有意な説明変数として認められた一方,社会的変数は(標準化)話者年齢のみとなった.また語彙的例外性も明らかとなり,過分散や大きな個体差を示すことが多い言語変異データに対するGLMMの有効性を主張した.