抄録
62歳男.膀胱癌手術後経過観察の胸部CTで,甲状腺右葉に嚢胞および腫瘍性病変を指摘された.高カルシウム(Ca)血症,低リン(P)血症,骨塩量の低下を認め,intact-副甲状腺ホルモン(PTH)は76pg/mlであった.頸部超音波検査,テクネチウム99mMIBIシンチグラフィー,頸部単純CTにより,甲状腺右葉下極に存在する腫瘍が原因の原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT),および甲状腺嚢胞性病変と診断し,腫瘍核出術を行った.病理標本はparathyroidal neoplasmの所見であり,副甲状腺腺腫と診断された.術後は良好に経過し,血清Ca,血清P,intact-PTHとも正常範囲内で安定した.なお,本症例には骨痛などの自覚症状はなかったが,骨粗鬆症の診断でカルシウム剤の内服治療が行われていた.