抄録
りんや窒素等の栄養塩類は農業生産活動に不可欠であり,土地単位あたりの生産性向上を実現する上で,肥料の役割は大きい。一方,投入過多な栄養塩類は富栄養化を引きおこし,水・土・大気圏のいずれにおいても富栄養化,大気汚染,生物多様性影響を引きおこす可能性をもつことから,その適正な利用と管理が強く求められている。人口の増加は,食料需要を増大させ,農業生産に必要な栄養塩類資源の需要を増加させる。さらに脱炭素の機運により導入されるさまざまな技術は新たな反応性窒素,高純度りんの需要を生みだす。これらの新たな窒素,りんの需要拡大が引きおこす環境への悪影響への懸念,また農業と,産業・エネルギー用途間の競合という経済面の懸念がある。社会全体で栄養塩類資源の持続的な管理保全の重要性について意識共有することが,今後ますます重要である。社会全体を俯瞰して栄養塩類のライフサイクルを通じた資源の流れを管理し,ステークホルダー間をつなぐ仕組み作りが必要である。