廃棄物資源循環学会誌
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32 巻, 6 号
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巻頭言
特集:廃棄物の肥料利用
  • 安岡 澄人
    2021 年 32 巻 6 号 p. 403-408
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー
    化学肥料中心の施肥により,農地の地力の低下や栄養バランスの悪化等が進んでおり,肥料原料の海外依存を減らし環境負荷を低減する面でも,家畜ふん尿や産業副産物等の有機資源の循環利用が重要となっている。こうした取り組みを進めるため,肥料取締法を改正した。改正により,肥料の配合規制を見直して堆肥と化学肥料の配合を可能にするほか,安心して農家に有機系の肥料を利用してもらうための原料管理制度の導入,成分等以外の品質や機能を表示する表示基準の導入等を行なった。今後は,持続可能な食料システムの構築に向けた 「みどりの食料システム戦略」 等も踏まえ,法改正を活かして,農家に使いやすい新たな肥料の生産,循環利用の体制づくり,地力向上に取り組む環境整備等,関係者で連携して有機物資源の循環利用を進める。
  • 染谷 孝
    2021 年 32 巻 6 号 p. 409-418
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー
    一般廃棄物と産業廃棄物に含まれる食品廃棄物を原料として生産される有機肥料 (堆肥) の現状と課題,今後の展望について考察した。わが国で排出される一般廃棄物のうち厨芥類は年間 1,000 万 ton 以上と推定され,その一部が堆肥の原料として全国 81 施設 (2019 年) で利用されているが,大部分は焼却処分されている。一方,産業廃棄物のうち食品廃棄物の約 30 % にあたる約 500 万 ton が資源化されていない。家庭で生ごみを堆肥化するために,コンポスター,段ボールコンポスト,電気式生ごみ処理機等が利用され,ごみ減量のため多くの自治体から推奨されている。業務用生ごみ処理機はホテルや社員食堂,病院等で利用されている。家庭系や事業系の生ごみを処理する堆肥化施設は全国で 60 以上の自治体・団体が運営している。堆肥に品質規格がないことの問題点を指摘し,未利用食品廃棄物の堆肥化促進について考察した。
  • 藤原 俊六郎
    2021 年 32 巻 6 号 p. 419-426
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー
    農業においては 1 年間に,家畜排せつ物 525 万 ton,農作物非食用部 498 万 ton の有機性廃棄物が発生する。農業系廃棄物を農業利用する方法には,①直接すき込み,②堆肥化,③炭化,④メタン発酵後の消化液利用等がある。家畜ふん尿やわら類では堆肥化,野菜くずでは畑に直接すき込みが多い。堆肥化技術は広く普及しているが,原料や製造法により成分が大きく異なる欠点がある。肥料化の方法は乾燥が主体であり,鶏ふん等原料が限られる。炭化は原料が限定されるとともに,用途も限定される。メタン発酵は,高水分の資材が利用でき,エネルギー回収と液肥の生産が可能というメリットはあるが,大規模施設が必要となる。これからの農業系廃棄物の肥料化のためには,堆肥と化学肥料を混合して肥料とするなど新しい事業やバイオガス化の普及等の他に,水熱分解による液肥化等の新しい手法の導入も必要である。
  • 加藤 雅彦
    2021 年 32 巻 6 号 p. 427-434
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー
    下水汚泥には肥料養分が下水から濃縮されるといえ,下水汚泥肥料・堆肥の耕種利用が期待されている。家畜ふん堆肥の利用が進んでいる一方で,下水汚泥堆肥の耕種利用は進んでいない。本報告では,下水汚泥堆肥の施用で期待されること,また懸念されることを整理し,下水汚泥堆肥の利活用に向けてどのような下水汚泥堆肥が求められるか,研究事例等にも触れながら述べる。下水汚泥堆肥は,加里を除けば家畜ふん堆肥と同等,あるいはそれ以上の有機物や養分 (窒素,りん,カルシウム等) を含んでいる。また,有害 (半) 金属量も家畜ふん堆肥と同量程度である。難溶態りんを多く含むが,これらはク溶性である。凝集剤や微量物質の影響等も考慮に入れながら下水汚泥堆肥の理化学性を評価し,その利用用途を整理する必要がある。また下水汚泥堆肥の評価点,評価方法,品質目安等も提示する必要がある。
  • 後藤 逸男
    2021 年 32 巻 6 号 p. 435-444
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー
    わが国の畑・施設では過剰施肥によるリン酸・カリ等の土壌養分過多とアンバランス化,水田では有機物やけい酸質肥料の施用不足による地力低下が顕在化し,土壌肥沃度の二極化が進んでいる。畑では家畜ふん堆肥が肥料ではなく土づくり資材 (土壌改良資材) として施用されてきたこと,本来堆肥施用を要する水田では,米価の低迷や人手不足等により堆肥やけい酸質肥料の施用量が激減したことが一因である。日本国内で発生する家畜ふん尿・下水汚泥・食品循環資源等のバイオマス資源には,国内で使われる化学肥料中の窒素・リン酸・カリ量をはるかに上回る肥料成分が含まれている。従来では,バイオマス資源の堆肥利用が主流であったが,今後は見た目にも既存と類似する肥料を開発し,その普及を進めることが求められる。ただし,有機物のみに依存する有機農業では,土壌の養分アンバランス化を助長しかねない。その回避には,肥料成分施用量を任意に調節できる化学肥料の併用が不可欠である。
  • 松八重 一代
    2021 年 32 巻 6 号 p. 445-452
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー
    りんや窒素等の栄養塩類は農業生産活動に不可欠であり,土地単位あたりの生産性向上を実現する上で,肥料の役割は大きい。一方,投入過多な栄養塩類は富栄養化を引きおこし,水・土・大気圏のいずれにおいても富栄養化,大気汚染,生物多様性影響を引きおこす可能性をもつことから,その適正な利用と管理が強く求められている。人口の増加は,食料需要を増大させ,農業生産に必要な栄養塩類資源の需要を増加させる。さらに脱炭素の機運により導入されるさまざまな技術は新たな反応性窒素,高純度りんの需要を生みだす。これらの新たな窒素,りんの需要拡大が引きおこす環境への悪影響への懸念,また農業と,産業・エネルギー用途間の競合という経済面の懸念がある。社会全体で栄養塩類資源の持続的な管理保全の重要性について意識共有することが,今後ますます重要である。社会全体を俯瞰して栄養塩類のライフサイクルを通じた資源の流れを管理し,ステークホルダー間をつなぐ仕組み作りが必要である。
  • 小林 新
    2021 年 32 巻 6 号 p. 453-463
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー
    肥料法改正にともない,畜産排せつ物を中心とした幅広い有機資源の普通肥料等との混合が可能となった。特に畜産排せつ物の発生場所が偏在することよる需要地との距離的制約を解消し,広域流通が可能となる肥料流通システムへの期待が高まっている。しかしながら,堆肥を活用した肥料製造は,立地条件,製造設備,製造ノウハウ等の制約があり,法制度改正による製品化が可能な肥料メーカーは限定され,農耕地への施用方法を含めて課題が多い。堆肥を活用した肥料製造の現状を踏まえて,スマート技術を併用した近未来の施肥マネジメントについて論じる。
令和3年度廃棄物資源循環学会セミナー報告
廃棄物資源循環学会若手の会セミナー報告
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