教育測定学の専門家としての立場から, 現状の医師国家試験の問題点を明確にした上で, item response theory (IRT) に基づくcomputer-based testing (CBT) 導入の利点と課題について検討した. CBTにより, 多様な問題形式を利用することで, 構成概念の代表性という側面から測定の妥当性向上に貢献することが期待できる. さらに, IRTの枠組みで等化された項目プールを用いてテストを運用することにより, 難易度や測定精度を制御して一定の質を満たす問題セットを継続的に作成し, 実施日程や会場, 受験者集団が異なる場合でも, 共通尺度上のスコアとして表現することが可能となる. 一方で, 事前の綿密なテスト計画と, 大規模な項目プールの構築・維持が最大の課題となる.