2022 年 53 巻 4 号 p. 381
「医学はサイエンスに基礎づけられたアートである」と言われるが, 日本の医学教育において, サイエンス分野の教育に比べ, アート分野の教育は十分に実践されていない. 米国の医学生を対象に行った調査では, 文学, 音楽, 演劇, ビジュアルアートなどの人文学に接している医学生は, 共感性, 感情評価, 自己効力感が良好であった1). 欧米を中心に実践されているMedical humanities (医療人文学) 教育は, 非人間的な医療実践, 医学生や医療者の非人間化を克服するための, 人文学科目による価値教育であり, 人間性, 利他主義などの医師のプロフェッショナリズムの涵養にもつながる. 本稿では, 国内の医学におけるアート分野の教育のうち, 人文学とアートを使ったプロフェッショナリズム教育の実践例として, 「哲学対話」と「インプロ (即興演劇) 」を取り上げる.