日本組織適合性学会誌
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原著論文
蛍光ビーズ抗体検査法におけるプロゾーン様現象への補体の関与 - 非働化による検証 -
黒田 ゆかり平田 康司永吉 裕二田原 大志浅尾 洋次中山 みゆき井上 純子大熊 重則迫田 岩根佐藤 博行清川 博之木村 彰方
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2012 年 19 巻 1 号 p. 33-41

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抄録

近年, 臓器移植や造血幹細胞移植において, レシピエントの保有するHLA抗体が重要視されるようになった. 特にドナー特異抗体は移植成績への影響が大きいため, 精製抗原結合蛍光ビーズを用いた高感度のHLA抗体同定検査が広く用いられるようになってきた. 我々は, 蛍光ビーズを用いた抗体検査の結果と交差適合試験の結果との乖離を3例経験したが, いずれも被検血清を希釈して検討した結果, この乖離はプロゾーン様現象によると考えられた. また, 保管血清を再度検査した際に, 蛍光ビーズを用いた抗体検査での蛍光値が保管前より明らかに高くなる検体が存在した. さらに, 血清を56℃30分で非働化するとプロゾーン様現象が抑制されたこと, およびウサギ補体やヒト新鮮血清を用いた実験から, この現象には熱処理で失活する補体の関与が示唆された. 一方, HLA抗体陽性と判定された20検体について検討したところ, 10検体でプロゾーン様現象が確認された. この10検体中3検体については, 新鮮検体を用いた抗体検査ではHLA抗体陰性と誤判定する可能性があった. 以上のことは, HLA抗体検査においてプロゾーン様現象が生じている可能性を考慮することの重要性を示す.

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© 2012 日本組織適合性学会
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