2001 年 7 巻 3 号 p. 211-218
ヒトゲノムの全塩基配列情報が決定されようとしている現在, ゲノム構成の機能的意味を知る上で進化学的研究は重要である. 主要組織適合抗原複合体(MHC)領域は, ヒトゲノムの中でも特に詳細に解析されており, さらに比較生物学的にもよく研究されていることから, 進化にともなうゲノムのダイナミックな変化や機能の多様化を調べるうえで, 大変興味深い領域である. MHCの遺伝子構成に関する系統進化学的研究の成果に関してはすでに多くの解説がある. そこで本稿では少し視点を変えて, MHCの染色体領域あるいはさらに巨視的にその領域を含む6番染色体全体の進化を考えてみる.