2019 年 62 巻 p. 79-85
“シワに効く”化粧品のニーズはいつの時代も高く,「乾燥による小ジワを目立たなくする」,「シワの改善」などの効能が謳われた化粧品は良く売れている。乾燥による小ジワの予防・改善する一般法はヒアルロン酸などの保湿成分を皮膚表面に吸着させ,そこに水分を留めて皮膚の乾燥を防ぐものである。しかし,ヒアルロン酸は親水性であり,脂分の多い皮膚(角質層)表面には長時間滞留できない。また,その分子サイズ(一般的なヒアルロン酸では,~4000 nm程度)も角質細胞間隙(数十nm)と比べて非常に大きくなるので角質層内部への浸透も起りにくい。
他方,著者らの開発した生体適合性・生分解性の「乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA: Poly-Lactide-co-Glycolide Acid)ナノ粒子」は直径160 nm程度の単分散粒子(粒子表面は両親媒性)として顔面上で挙動する [1]ので,角質層や毛穴・シワ内部への浸透性に優れたDDS(ドラッグデリバリーシステム)キャリアとして応用できる。単体では十分浸透させることのできなかった有用成分を本粒子へ内包し用いることで角質層深くにデリバリーできるようになった。そこでヒアルロン酸に本技術を適用して,これまで角質層表層にのみ形成されていたヒアルロン酸の保湿帯を角質層深部まで拡張することができ,これにより新発想の保湿効果が体感できるようになった。本報では本保湿効果,抗シワ効果の検証結果を紹介する。