粉砕
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62 巻
選択された号の論文の31件中1~31を表示しています
〈表紙〉
〈編集委員会〉
〈目次〉
〈巻頭言〉
〈特集〉 粉体材料の合成および利用を支える粉体技術
  • ソティリス イー プラツィニス
    2019 年 62 巻 p. 3-9
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿は古代中国やグーテンベルグでの聖書印刷に用いられたエアロゾル技術から,現代における商用展開の現状について解説する。近年,離散要素法および分子動力学を用いた気相中における粒子生成・成長のモデリング法の発展により,経験則に依らない気相プロセスの最適化が可能となっている。具体的には,気相中で生成する粒子の持つ漸近的な凝集構造と平衡粒度分布がプロセス設計を非常に容易している。これにより組成,サイズおよび形状が精密制御された機能性材料を火炎噴霧熱分解法により量産可能となる。すでに一部の高付加価値材料(例えば,銀ナノ粒子やカーボン被覆Coナノ粒子)が市販されている。一方で単原子貴金属担持触媒や呼吸分析用化学センサへの展開も期待されている。後者は,アセトン,NH3,イソプレン,さらにはホルムアルデヒドを選択的に検知することでそれぞれ体脂肪燃焼,末期腎疾患,コレステロールや室内空気汚染の指標として有効であり,複数のセンサを組み合わせることで災害時に瓦礫の下敷きとなった人々の発見さえも可能にする。

  • 川崎 亮
    2019 年 62 巻 p. 10-21
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    グラフェンを分散強化相として用いたCMC複合材料は,グラフェンの優れた物性および機械的性質を反映した機能性・構造材料となることが期待され,シナジー効果が得られる場合には,さらにユニークな機能性が付加される可能性がある。ここでは,グラフェンの作製方法を概観した上で,その中の一つである酸化グラフェン(GO)を還元してグラフェン(rGO)を得る方法に着目する。GO/金属酸化物セラミックス粉末の均一分散混合する方法について述べ,それら混合粉末の焼結緻密化による複合材料(CMC)の作製と機能特性の新しい展開について述べる。特徴的な微視組織形成について紹介し,電気的特性からユニークな機械的性質,そして熱電機能特性への展開など,グラフェンを用いた機能性複合材料と今後の応用について展望する。

  • 高橋 向星
    2019 年 62 巻 p. 22-29
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    サイアロン蛍光体はSi-Al-O-Nなどの身近な元素を主成分とする粉末発光材料である。21世紀になって発見された新材料であるが,すでに家庭にも普及した白色LED照明やRGBの3原色を鮮やかに表示できる液晶ディスプレイ用として広く使われている。本稿では,まず,これまでに実用化され蛍光体メーカにより量産されている蛍光体を紹介し,特に学術的にも興味深い性質を持つβサイアロン緑色蛍光体について詳述する。次に今後期待される超高演色照明やSuper Hi-Vision (8K) TV用にも応用可能な各種サイアロン蛍光体の例を挙げ,その中から青色JEM蛍光体を例にしてスペクトル制御の原理についても説明する。最後に蛍光体の特性評価や工業的取扱いにおいて重要となる標準物質としてのサイアロン蛍光体の役割についても言及する。

  • 中村 浩
    2019 年 62 巻 p. 30-38
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    二次電池や燃料電池などの電極は,活物質や触媒などの粉体を液に分散させたスラリーを塗工,乾燥して成膜している。そのようなスラリープロセスにおいて,生産性向上のためには高濃度化が図られるが,その場合,擬塑性流動やダイラタンシー挙動などのような非ニュートン流動を示すようになり,プロセス制御が困難になるため,その対策提示が求められている。そこで,単分散シリカ粒子を用いて,高濃度粒子分散液のレオロジー挙動とメカニズムを考察した。

    その結果,高濃度シリカ粒子分散液は溶媒の粘度が上昇するのに伴って高せん断速度領域でダイラタンシー挙動を示すことがわかった。そして,このダイラタンシーを発現するせん断速度は分散媒の粘度と粒子径が増大するのに伴って減少するが,せん断応力は一定であることがわかった。このことからダイラタンシーは粒子の拡散とせん断による拡散の比であるPe数に依存することを明らかにした。

  • 後居 洋介
    2019 年 62 巻 p. 39-43
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,セルロースの新たな利用方法として,セルロースナノファイバー(CNF)が注目を集めている。CNFはパルプなどのセルロース原料をナノサイズまで細かく解きほぐしたもので,高強度,高弾性率,低線熱膨張係数,高透明性,大比表面積など,多くの特徴を有している。第一工業製薬ではこのCNFを水系の添加剤として研究開発を進めている。CNFは水中でネットワーク構造を形成する。このネットワーク構造に起因して,非常に高い擬塑性流動性などのユニークなレオロジー特性を発現する。さらに,油滴や微粒子などの安定化といった効果も得られる。また,CNFは乾燥させることで高透明性かつ高強度なフィルムを調製することも可能である。当社のCNFは上述のようなレオロジー特性を生かして,水性ゲルインクボールペンインク用増粘剤として採用されている。このボールペンは筆記具として世界初のCNF実用化案件として,各所から注目を集めている。

  • 木村 尚司
    2019 年 62 巻 p. 44-50
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    粉体塗装は溶剤を使用しない為,安全無公害性,塗料回収による省資源性,取扱いが容易で自動化がしやすいという高作業性が認められ,その市場が拡大した。環境問題が世界の問題として認識されるにつれて,世界的規模で地球環境保全への取り組みがますます強化され,環境問題は企業にとって避けて通れない問題である。塗装業界においてもVOC規制に見られるように,大気中に排出する有機溶剤を減らす方法として,粉体塗料化,水性化,ハイソリッド化への移行が模索されてきている。その中でも粉体塗料は無溶剤で回収・再利用する事が出来るので,環境対応として有望な塗料である。粉体塗料は2008年のリーマンショック直後はそれまでになかった落ち込みとなったが,その後は環境問題から着実に伸びてきている。本稿では,粉体塗装の塗装業界におけるシェアや今後の展望,粉体塗装の基本技術やその問題点,Wagner社製品の特長・優位性を含めた最新技術まで説明する。

〈解説〉
  • 堀田 裕司
    2019 年 62 巻 p. 51-58
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    CO2削減目標が掲げられているパリ協定,国連サミットで採択されたSDGs(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))など,人類の持続可能な社会を構築するべき目標が定められている。この様な社会的背景の中で,軽量性の観点から樹脂(プラスチック)系の複合材料が注目され,情報・家電・輸送機器・福祉医療機器・ロボットなどの各種産業分野において重要な材料となっている。一方で,樹脂の機能性や機械特性は低く,その物性向上に粉体フィラーの果たす役割は大きい。特に繊維状,板状のアスペクト比の大きな低次元フィラーは複合材料の開発において注目されている。本稿では,機械的な粉体処理によって,低次元フィラーを高アスペクト比化するための粉体処理プロセスについて述べるだけではなく,機能系(高熱伝導性複合材)と構造系複合材料(CFRP)の機能物性と成形性向上における低次元フィラー(六方晶窒化ホウ素; h-BN)の添加効果とその有用性について紹介する。

〈テクニカルノート〉
  • 宮武 繁
    2019 年 62 巻 p. 59-63
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,食の好みは多様化し,市場には多くの種類の食品製品が溢れている。またそれと合わせ消費者からは食品の安全性を高く求められている。そのような安全性の要求に答える為に,製造機械としては,洗浄性,点検性に配慮した機械を提供する必要がある。ここでは,弊社で取扱いしている逆円錐型混合機ナウタミキサ,バイトミックスを紹介する。これらの混合機は,自転・公転するスクリュを備えた機械で,原料粉体を上昇運動・分散移動運動・下降運動させる事で精度の高い混合が可能な機械である。これまで10,000台以上を超える実績があり,幅広い型式と多彩なオプションを持つ混合機である。これらの混合機には点検性の高い大型点検口「ビッグドア」を取り付けることが可能である。このビッグドアの紹介,機器の洗浄性,点検性,また弊社で実施できるテストについても合わせて紹介する。

  • 佐野 敦
    2019 年 62 巻 p. 64-70
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    一昨年の労働安全衛生法の改正を受けて,労働災害防止,作業者保護に対する意識が一段と高まったと感じる。しかし,粉体を扱う現場に目を向けると粉じんが飛散する厳しい現場が依然として多いのが現実である。粉体の性状が多岐に渡る事から環境改善が有効に働いていない状況が多くあり,さらなる環境改善を要望するケースが増えている。今回はワンランク上の環境改善を目指し,規制の整理,把握と粉体製造現場にマッチした封じ込め技術の実績,関連機器を紹介する。

    Editor's pick

    最近の労働安全衛生法の改正を受けて,労働災害防止,作業者保護に対する意識が一段と高まってきているが、粉体を扱う現場では、粉じんが飛散する厳しい環境が依然として多いのが現実である。粉体の性状が多岐に渡る事から環境改善が有効に機能していない状況が多くみられ,さらなる環境改善を要望するケースが増えている。本稿ではワンランク上の環境改善を目指し,規制の整理,把握と粉体製造現場にマッチした封じ込め技術の実績,関連機器が紹介されている。

  • 松下 孝夫, 笹辺 修司
    2019 年 62 巻 p. 71-78
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    湿式ふるい分け装置ヴィブレット®(VBL)は世界で唯一の湿式ふるい分け専用の装置として開発された。粉体サンプルの特性評価技術は日々進歩し,現在の粒子径分布計測には,主にレーザ回折・散乱法を用いた評価が一般的となっている。しかし,品質保証面で確実性の高いふるい分け操作は,ふるいが破損しない限り,粒子径の製品保証が可能な唯一の手法として古くから根強い需要がある。本稿では,VBL-Fの改良点とCEマーク対応について紹介する。

  • 笹井 愛子, 鈴木 貴弘, 杉井 祐太, 辻本 広行
    2019 年 62 巻 p. 79-85
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    “シワに効く”化粧品のニーズはいつの時代も高く,「乾燥による小ジワを目立たなくする」,「シワの改善」などの効能が謳われた化粧品は良く売れている。乾燥による小ジワの予防・改善する一般法はヒアルロン酸などの保湿成分を皮膚表面に吸着させ,そこに水分を留めて皮膚の乾燥を防ぐものである。しかし,ヒアルロン酸は親水性であり,脂分の多い皮膚(角質層)表面には長時間滞留できない。また,その分子サイズ(一般的なヒアルロン酸では,~4000 nm程度)も角質細胞間隙(数十nm)と比べて非常に大きくなるので角質層内部への浸透も起りにくい。

    他方,著者らの開発した生体適合性・生分解性の「乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA: Poly-Lactide-co-Glycolide Acid)ナノ粒子」は直径160 nm程度の単分散粒子(粒子表面は両親媒性)として顔面上で挙動する [1]ので,角質層や毛穴・シワ内部への浸透性に優れたDDS(ドラッグデリバリーシステム)キャリアとして応用できる。単体では十分浸透させることのできなかった有用成分を本粒子へ内包し用いることで角質層深くにデリバリーできるようになった。そこでヒアルロン酸に本技術を適用して,これまで角質層表層にのみ形成されていたヒアルロン酸の保湿帯を角質層深部まで拡張することができ,これにより新発想の保湿効果が体感できるようになった。本報では本保湿効果,抗シワ効果の検証結果を紹介する。

    Editor's pick

    乾燥による小ジワの予防・改善する一般的な方法は、ヒアルロン酸などの保湿成分を皮膚表面に吸着させ,そこに水分を留めて皮膚の乾燥を防ぐものである。しかし,ヒアルロン酸は親水性であり,脂分の多い皮膚(角質層)表面には長時間滞留できず、また、その分子サイズが角質細胞間隙に比べて非常に大きくなるので角質層内部への浸透も起りにくい。 一方、生体適合性・生分解性の乳酸・グリコール酸共重合体PLGAナノ粒子は表面が両親媒性であり、顔面上で挙動する ので,角質層や毛穴・シワ内部への浸透性に優れたDDSキャリアとして応用できる。そこで、ヒアルロン酸に本技術を適用して,これまで角質層表層にのみ形成されていたヒアルロン酸の保湿帯を角質層深部まで拡張することにより新発想の保湿効果が体感できるようになった。本報は本保湿効果,抗シワ効果の検証結果について紹介している。

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