抄録
エチオピアの伝統的発酵乳エルゴ(Ergo)は, 燃やしたオリーブの枝で内部を薫煙した陶製容器中で生乳を自然発酵させて作られる。夲報告では, エチオピア南部のアワサ地方の異なる農家から採取した3種類のエルゴからその製造に関与する乳酸菌を分離同定し, 生化学的性状を調べた。
分離した乳酸菌21株のうち, 乳酸球菌は15株ですべてL型乳酸を生成するホモ発酵菌で, 糖類の発酵性試験ならびに対照菌との性状比較によってLactococcus garvieaeおよびLactococcus lactis subsp. lactisと同定された。一方, 乳酸桿菌は6株で, D型乳酸を生成するホモ発酵菌ということと糖類の発酵性試験から, すべてLactobacillus屬の同一菌種とみなされたが, 既知のLactobacillus speciesと一致するものはなかった。
以上の3菌種はそれぞれ異なる試料から分離されたもので, エルゴの乳酸菌叢は必ずしも一定していないことが分かった。また, これらの3菌種の抗菌活性を調べたところ, Escherichia coli RB, Staphylococcus aureus IAM 1011, Lactococcus lactis subsp. lactis NIAI 1527, Lactobacillus bulgaricus 7235に対しては抗菌活性はなく, Streptococcus thermophilus NIAI 510に対しては抗菌活性を示した。