ミルクサイエンス
Online ISSN : 2188-0700
Print ISSN : 1343-0289
ISSN-L : 1343-0289
原著論文
Lactobacillus gasseri LA158からのガセリシン T 産生に関する遺伝学的および生化学的証明
安田 成美荒川 健佑川井 泰中條 貴弘中村 圭志鈴木 はるか伊藤 喜之西村 順子牧野 由美子重信 秀治齋藤 忠夫
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 63 巻 1 号 p. 9-17

詳細
抄録

 ガセリシン T はラクタシン F ファミリーに属する二成分性バクテリオシンで,その生合成関連遺伝子は Lactobacillus gasseri に広く分布していることが知られている。本研究では,ガセリシン T の産生が推定されるヒト乳児糞便由来 Lb. gasseri LA158 における,ガセリシン T 生合成関連遺伝子の完全長を明らかにし,本バクテリオシンの産生を遺伝学的および生化学的手法を用いて検討した。LA158 株の塩基配列解析からは,ガセリシン T の生合成,自己耐性,分泌および転写調節に関わる 9 つの遺伝子(gatPKRTCZAXI)を含む6.3-kb の領域を見出した。9 つの遺伝子のうち後半の 5 つの遺伝子は既に他株で報告されている gat 遺伝子と同一であり,9 遺伝子のいくつかは他のラクタシン F ファミリーバクテリオシンの関連遺伝子と高い相同性を有していた。ガセリシン T の精製は,チーズホエーベース培地で LA158 株を培養し,その培養上清を透析後,疎水および逆相クロマトグラフィーに供することで行った。RP-HPLC を用いた最終精製ステップでは,抗菌活性画分が 1 つの広範囲にわたるピークとして回収された。回収画分の MS 分析では,抗菌活性本体としてガセリシン T の二成分(成熟体の GatA と GatX)が共存していることが明らかとなった。以上の結果は,Lb. gasseri LA158 がガセリシン T 産生株であることを証明するものである。食品に利用可能なチーズホエーベース培地を用いたガセリシン T の産生は,将来におけるガセリシン T およびその産生菌の食品保蔵への高い利用性を示すものと期待される。

著者関連情報
© 2014 日本酪農科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top