ミルクサイエンス
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原著論文
糖飢餓が Lactobacillus gasseri SBT2055株の酸性下での長期保存中の生残性を改善する
渡邊 正行本間 満上西 寛司藤本 洋祐瀬戸 泰幸宮本 拓
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2014 年 63 巻 3 号 p. 137-144

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抄録

 糖を添加しない MRS 培地(MRS-Glc 培地)でインキュベートすることにより,乳酸桿菌のストレス耐性に対する炭素源枯渇処理の効果を調べた。MRS-Glc 培地でインキュベートした Lactobacillus gasseri SBT2055株は低 pH および過酸化水素ストレスに対しても高い生残性を示した。またこの時の検討した全ての遺伝子発現量が低下した。酸ストレスは菌体内の活性酸素種(ROS)生成を誘導し,菌体を死に導くが,炭素源枯渇処理をした菌体は酸ストレス下での ROS 生成が減少したことから,菌体内 ROS と酸ストレス耐性との関連が示唆された。さらに 6 株の乳酸桿菌を MRS-Glc 培地中において37℃で18時間インキュベートし,brix26%の高濃度糖溶液中で10℃,10日保存した結果,インキュベートしなかった菌体と比較して Lactobacillus gasseri では生残性が向上した。この 2 菌種は腸内に分布していることから,飢餓ストレスによる酸耐性向上は腸内細菌に特異的な現象の可能性も考えられる。これらの結果から炭素源枯渇処理が Lactobacillus gasseri SBT2055株の酸耐性および低温保存中の生残性を向上できる可能性を示した。

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© 2014 日本酪農科学会
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