ミルクサイエンス
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原著論文
二価金属イオンが Lactobacillus gasseri SBT2055の「ガセリシン T」生産に及ぼす影響
郭 暁艶上西 寛司川井 泰安田 成美春日 元気竹澤 志織瀬戸 泰幸西村 順子北澤 春樹齋藤 忠夫
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2014 年 63 巻 3 号 p. 129-135

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抄録

 ガセリシン T (GT)は,ヒト腸管より検出される乳酸桿菌 Lactobacillus gasseri により生産される二成分性バクテリオシンである。また,当研究室で分離したヒト乳児由来の GT 生産 LA158株を含む L. gasseri は,改良乳培地で良好に生育するものの,乳中に豊富に存在する二価金属イオンにより LA158株の GT 生産は抑制されることが知られている。本研究により,GT 生産株として最初に見出された,抗肥満効果を有する L. gasseri SBT2055は,MRS 培地にて二価金属イオン(Mg2+,Ca2+, Mn2+, Fe2+ および Zn2+)の添加により濃度依存的に GT 生産が抑制されることが判ったが,LA158株における抑制濃度(Mg2+ および Ca2+)とは異なっていた。また,200 mM の二価金属イオン添加では,良好に生育するにもかかわらず,GTの生産は完全に消失した。さらに,二価金属イオンのキレート剤で食品添加物であるクエン酸三ナトリウム(TSC)の添加によりGT 生産は回復した。以上の結果から,ヨーグルト製造においてスターターの生育を阻害せずに,GT 生産性のプロバイオティック L. gasseri 株を効果的に添加・利用出来るものと考えられた。

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© 2014 日本酪農科学会
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