ミルクサイエンス
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原著論文
過酸化水素蓄積量を低減したヨーグルト中におけるBifidobacterium adolescentis の生残性改善効果
長岡 誠二浦山 春香髙橋 美帆北條 研一川井 泰増田 哲也
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2015 年 64 巻 3 号 p. 201-206

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抄録

 ヨーグルト中には Bifidobacterium の生残性を低下させる要因の一つである過酸化水素(H2O2)が含まれている。本研究では,ヨーグルト中における Bifidobacterium の生残性向上を目的に,ヨーグルト製造に用いられるスターター乳酸菌11株を用いて,乳中における37℃・16時間培養時の H2O2 産生量を評価した。その結果,Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricusStreptococcus thermophilus に比べて約 5 倍の H2O2 を産生した。また,L. bulgaricus の H2O2 産生量は,好気培養に比べて嫌気培養では65%減少したことから,L. bulgaricus の酸素消費機構によって生じた H2O2 がヨーグルトに蓄積しているものと推察された。次に,ヨーグルト環境を模した乳酸緩衝液に様々な菌数比となるように乳酸菌体を懸濁させた時の H2O2 蓄積量は,L. bulgaricus 菌数が増えるほど高くなり,一方 S. thermophilus 菌数の増加はあまり影響しなかった。以上より,H2O2 産生菌である L. bulgaricus 菌数が,直接的に H2O2 蓄積量に影響を与えていると考えられた。そこで,L. bulgaricus 菌数を低減したヨーグルトを調製した結果,製造後における H2O2 蓄積量は大きく減少し,10℃で14日間保存後の Bifidobacterium adolescentis KH 96の生残性は顕著に改善された。

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© 2015 日本酪農科学会
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