ミルクサイエンス
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原著論文
牛乳及びマイタケ(Grifola frondosa)の摂取は1,2-ジメチルヒドラジン処理マウスにおける大腸腺腫の形成を抑制する
カリヤワサム KMGRM山下 慎司福田 健二大和田 琢二木下 幹朗
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キーワード: 牛乳, キノコ, 大腸腺腫
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2019 年 68 巻 2 号 p. 85-93

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抄録

 日本をはじめとする東アジア諸国において大腸がんの罹患率は増加しており,その対策が急務となっている。多くのコホート研究から,牛乳,カルシウム,食物繊維,ビタミンDなどの摂取は大腸がんリスクを下げることが示唆されている。そこで,本研究ではDMH処理により大腸腺腫(ACF)を誘導したマウスを用い,食事による大腸がん予防の可能性を検討した。実験食はAIN-76に準拠し,リスク低減報告のある牛乳(全脂粉乳)を10%加えた牛乳食,食物繊維とビタミンDが豊富なキノコであるマイタケを10%加えたマイタケ食,そして牛乳とマイタケを5%あるいは10%ずつ加えた混合食を設定した。そして11週間,マウスに各実験食を自由摂食させた。DMH処理は前がん病変部位であるACF形成を誘導したが,牛乳,マイタケおよびその混合食の摂取はACF形成を有意に抑制した。とくに10%混合食群においてACF数は最も低値を示した。また,マイタケと10%混合食群の盲腸pHはコントロール群と比べ有意に低い値を示した。盲腸pHは腸内細菌による短鎖脂肪酸の生産を表すことから,ACF形成の抑制には腸内菌叢の改善が関与することが示唆された。これらの結果から日常的な牛乳,マイタケ,あるいはこれらの組み合わせの摂取は大腸ACFの形成抑制を介し,大腸がんを予防する可能性が示された。その機構として,牛乳とマイタケ成分によるカルシウム吸収性および生体利用性の向上や腸内環境の改善などが考えられた。

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© 2019 日本酪農科学会
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