ミルクサイエンス
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原著論文
徳安法を用いたパニールチーズ中のβ-ラクトグロブリンの免疫電子顕微鏡観察
神垣 隆道花澤 智仁伊藤 喜子西野 有里宮澤 淳夫
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2019 年 68 巻 2 号 p. 94-99

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抄録

 免疫電顕法は,特定タンパク質の局在を証明する電子顕微鏡観察方法として,乳製品の分析においても,有用である。そこで我々は,牛乳を加熱した後に酸凝固して得られるパネーチーズ中に存在するβ-ラクトグロブリンの分布を可視化することにより,徳安法(凍結超薄切片法)の有用性を確認した。対照試験(包埋後染色法)では,パラホルムアルデヒドのみでタンパク質を固定したため,乳タンパク質は連続相になっておらず,ほとんどの脂肪球が流出していた。徳安法では,脂質の流出がほとんど起こらず,多数の空洞と脂肪球を含む乳タンパク質の連続相を観察することができた。脂肪球は乳タンパク質と共に凝集体を形成し,金コロイド標識したβラクトグロブリン抗体が,これらの凝集体を取り囲んでいた。また金コロイド標識したβラクトグロブリン抗体は,空洞内の脂肪球界面にも吸着していた。このことは,乳タンパク質の構造体だけでなく,脂肪球界面に吸着する乳タンパク質の状態を評価できる可能性を示している。それ故,徳安法はパニールチーズに限らず,脂質を含んだ乳製品についても広く適用できることが予想され,物性や食感といった特性の改善に応用できる可能性が示された。

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© 2019 日本酪農科学会
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