2023 年 41 巻 3 号 p. 117-123
宇宙物理や高エネルギー物理の分野で長い歴史をもつコンプトンカメラの技術を医療応用できれば,新たな核医学診断法を開拓できるかもしれない.一方で,ヒト撮像においてPET と同程度の解像度を実現するには,装置性能の向上が必要不可欠である.SPECT やPET は確立された性能評価技術を活用して装置開発が進められているが,コンプトンカメラは放射線の検出方式や検出器配置がさまざまであり,標準的な性能評価技術が存在しない.標準評価法があればさまざまなコンプトンカメラの検出器性能とイメージング性能を明らかにでき,装置性能の直接比較だけでなく,臨床機に要求される検出器性能の導出,有望な検出器の選定にも活用できると考えられる.そこで,量子科学技術研究開発機構が主体となって分野横断的な研究グループを組織し,医用コンプトンカメラを同一条件で性能比較できる標準評価法の開発に取り組んでいる.本稿では,この取り組みについて概説する.